乙女の部屋

□☆温かい記憶
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そのあと、光と家まで一緒に帰ることになった




ふらついてて危ないし、隣同士なんだから…って




「とにかく、横になってた方がいいよ」
「…わかった」




素直に聞かないと、無理矢理寝かされそうだったしな



「光は俺の母親に会ったこと…あったな」
「う、うん」
「なら…どんなやつかも聞いてるだろ?」
「…清春君と九影先生が…」



何故か俺は、今日に限って色々話してしまう
光は黙って聞いてくれた



「…だが、真壁にあの言葉は失言だった
母親への思い入れが強いからな」
「…私には二人の傷を解ってあげられない
私はちゃんと両親が居るから」
「それでいい…アンタにまでこんな思いしなくていい」




悲しい顔なんてしてほしくない
ずっと、笑っていてほしい



それが光に願うことだから



「でも…悲しいのは…解る
私が思ってるより…ずっと、辛くて…ずっと、痛かったでしょ?」




俺を見つめるその瞳から、雫が溢れた



なんで光は泣いている?




「アンタを泣かせるつもりはなかった」
「ごめん…なさい…私、でも…」




止まらない涙
拭っても拭っても、溢れてくる



俺の為に…泣いているのか



「私じゃ…瞬君を…温めること…出来ないかな?」
「…?」
「…辛いことも、悲しいことも…私、一緒に受け入れるしか出来ないけど…」





拭う涙が温かいのは、俺の指が冷たかったからじゃない



これは



光の心



「…側に…居てくれ…今だけでもいい」
「…瞬君」
「光…温かい」
「…うん…瞬君が望むなら…ずっと」




そのまま、光を抱き締めた




「…温かい…光…温かくて気持ちいい」
「…瞬君」
「もう少しだけ…このままでいさせてくれ」



気持ちよくて、離したくなくなった
抱き締めたまま髪を撫でたり、首筋にキスしたり
「し、瞬君…んっ」
「あまり…可愛い声を出すと…食っちまうけどいいのか?」
「…えっ…」



耳まで赤くなった
けど、今襲ってしまうのはさすがに申し訳ないか
俺のために泣いてくれたわけだし








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