がくカイ小説

□始まりの音と記憶 −2人暮らし編−
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俺とがくが恋人同士になって、2ヶ月近くが経とうとしていた。
この間、恋人らしい進展は何も無かったと言えるけれど、お互いの気持ちを理解し合えたことで、一緒にいる時間は格段に多くなった。

そんなある日、新しいボーカロイドが家族としてやってきた。

「私は巡音ルカ。まぁ、よろしくお願いしますってところかしら」

という、なんだか高飛車な自己紹介だったにもかかわらず、最早新人いじりのようにも思えてくる質問攻めが始まった。

「ねーねールカ姉って呼んで良いー? あ、リンはリンで良いよー」
「別に構わないけど。で?」
「ルカ姉、好きな食べ物はー?」
「マグロよ。何か文句あるわけ?」
「じゃあ、中トロと大トロどっちが好きなんだ? あ、オレはレンってんだ」
「大トロに決まってるでしょ? まぁどっちも好きかしら」
「ミクっていいます。私、ネギすっごく好きなんだけど、ルカ姉さん、ネギトロって美味しいよね!」
「……それは…どういう意味かしら…?」
「え? どういうって?」
「…何でもないわ。そうね…嫌いじゃないかしら」
「ねーねールカ姉! みかんはみかんは?」
「ルカ姉、バナナはどうなんだよ!?」
「ちょっと! アンタたちそんなことどうでも良いでしょ!?」

手をパンパンと叩いて、ヒートアップするリンレンを抑えたのはめーちゃんだった。

「今はそれより先に、考えることがあるじゃない?」

そう、考えること。
がくがこの家に来た時点で、もう既に空き部屋がないんだ。
つまり誰かが誰かと同室になるか、誰かが別居するか。可能性的に考えられるのは後者だ。
各個人の部屋は物が溢れかえっている状態で、今から移動を…というのはかなり無理がある。
唯一、物がほとんど無いがくの部屋をルカちゃんに譲って、俺とがくが同室、というのが一番簡単で良い方法かと思ったんだけど、やっぱりこの人がそれを許さなかった。

「ふっざけんな! こんな変態茄子とカイ兄が一緒の部屋になっちまったら、一晩でカイ兄が汚されてあぁぁぁあぁ茄子お前がインタネ社に帰れば良いだろーが!! それが一番手っ取り早いし おぉ…オレのこの意見、名案じゃん。よし茄子! お前早速、」
「何バカなこと言ってんのよ」

冷ややかにめーちゃんが一蹴する。それだけでレンは黙り込んだ。
となると、やっぱり誰かが別居するわけで。
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