がくカイ小説
□−欲しいもの−
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「カイト、何か欲しい物は無いか?」
「え?」
朝食後のカップアイスに幸せそうな愛しいその姿に尋ねてみれば、案の定可愛らしい声が返ってきた。
「何処か行きたい場所でも良い。何か無いか?」
「え、えっと…どしたの急に…?」
今更何を言うか。
今日もパーティーを開こうと気合いの入っていたミク殿やリン殿を押し留めてくれたルカ殿には感謝せねばな。
今日のこの時間こそがルカ殿からの、私にとってはバレンタインの、カイトにとっては誕生日のプレゼントだという事か。
2人で過ごせる大切な記念日。
私はそなたに何かしてやりたいと思っているのだが。
「う〜ん…」
と、暫し悩んだ後、カイトが手元のアイスをちらりと見る。
「…アイスなら買い込んであるが…」
「…だよね…」
再び考え込むカイト。
そなたはそれ程までに物欲が薄いのか。…まぁ、私とて人の事は言えんが。
アイスの最後の一口を食べ終えたカイトの隣に座ると、私の重みの分だけソファが沈み、彼の体が僅かに此方へと傾く。
そのまま腕を回して引き寄せ、そっと頭を撫でてやると、漸くカイトが口を開く。
「えっと…今は特に、無い…かな」
得られた答えはとても寂しいもので。
思わず私はカイトの顔を間近から覗き込み、尋ねていた。
「本当に何も無いのか?」
すると彼は一瞬瞳を伏せたが、直ぐに私を見つめ返し、
「だって…ついこの前この指輪買ってもらったし…」
「それは今日のこの日とは別の話だろう」
「でも…チョコも貰っちゃったし」
「それもバレンタインの話だ」
「ふ、服も貰っちゃって…」
「それだけでは足りぬ。今日の分がまだだろう?」
ついっと目を背けてしまったその姿が、まるで拗ねた子供の様に幼く可愛らしく、私は彼の額に小さくキスをする。
「カイト、何か欲しい物は無いのか?」
彼の耳元に唇を寄せ、先程とは変わって少し意地悪な声で囁いてみる。
すると、彼が何かを呟いた、気がした。