短編

□期待
2ページ/3ページ

ドキドキと鼓動が早くなる。

ゆっくりと体を前のめりにし、ブルースの額から、こめかみ、頬に口づけし
最後に薄く開かれた唇に口づける。

ちゅ

と音が妙に響いて、軽く唇を舐めて離す。
今ブルースの瞳に映っているのは僕だけ、視界には僕の姿しか映っていない。


もっと

もっと

もっと長い時間

あなたの視界すべてが

僕で埋め尽くされて

僕しか見えなくなればいいのに


「ねぇ、いい加減僕のこと好きだって認めたら?」

「…」

「好きって言ってよ」

「…好きなのはお前の方だろ?」

「うん、好きだよ。大好き、ブルース。愛してる。だから…僕だけのブルースになってよ」

わがままを言う子供みたいにブルースに強請って、相手の手袋をするりと外して綺麗な手背、指にキスをする。


「残念だが、お前のものにはなれない。俺はこの街のものだ…」

「…」

ブルースは表情を曇らせ、少しだけ申し訳なさそうに言う。

そんなの答えを聞かなくたって最初からわかってたけど。
分かってたけど…


どうして僕は尋ねるんだろ?



   だってあなたの口から
   聞きたい言葉が出てくるのを
   期待してるから


いつかはあなたがバットマンという役目を終えたら

そんな夢のような話があったら

期待していた言葉を聞ける日がくるかもしれないのに。



そんなことを思いながら、飲み込んんだ思いをぶつける様にブルースにもう一度口づけをした。




END
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ