短話
□だって好きなんだ
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四限目が終わり、教室内では育ち盛りの生徒達が弁当や購買のパンを広げ、騒がしく食事を始めている。
学校にいる一日で、最も楽しい時間だろう。松田も友人達と共に、くだらない話で盛り上がっていた。
「で、ソイツが彼女に言われたのが……ってオイ。何してんだよ」
突然自分の背中にのしかかった“モノ”に、松田は頭だけで振り返りながら、苛立ちを込めた視線を送った。
「松田ぁ〜。何で起こしてくんないの?ふつー昼メシは、カレシと一緒に食べるんじゃない?」
「だぁれが彼氏だボケ。俺はテメェと関係ねぇし、起こしてやる義理もねぇよ。暑苦しい、重い、離れろ!」
松田は背中の“自称彼氏”に罵声を浴びせ、肩を押して引き剥がそうとする。
「ヒデェよ松田ぁ〜。こんなに愛してるのに……」
うなだれて上目使いに松田を見る姿は、完全に叱られた大型犬だ。しかし懲りた様子はなく、更に松田の首に両腕を回して、甘えるような仕草をする。
「やだぁ〜橋詰くん可哀想ぉ!ちょっと松田!ちゃんと仲良くしろよ!」
「てか、松田なんかほっといてあたし達と食べようよぉ〜」
大型犬男、もとい橋詰は長身にハーフっぽい顔立ちの、いわゆるイケメンである。
そのイケメンを粗末に扱う松田に対し、女子から非難の声が上がった。
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