SJ story
□怪盗ヒチョル
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「とりあえず、取調べはここまでだ」
「俺はどうなる?」
「証拠不十分で…おそらく釈放だ」
「取り引きしないか?」
「取り引き?」
「そうだな…刑事さん、あんたが俺にキスできたら
本当のことしゃべってもいいよ」
生真面目そうな顔が驚きで歪む。
…それでも、綺麗な眼をしてるな。
「…僕は刑事だ。容疑者との取り引きには応じられない」
視線を逸らしてそう言った刑事をじっと見つめたら
少しだけ、耳が赤くなってた。
あれから一週間。
食欲が、まったくない。
いつもの半分しか食べられない。
…気がつくと考えごとばかりしている。
あの刑事はどんな風に
恋人を抱きしめるんだろう?
あの刑事は…
どんなキスをするんだろう。
そのとき初めて気づいたんだ。
心を盗まれたのは
俺の方だ、と。