04/04の日記

20:32
secret
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「兄さん、今日は家まで送るよ」


宿舎からたいして遠くない仕事先で
収録が終わってすぐシウォンが僕にそう言ってきた。


今日は車で来たんだな、とすぐに分かったから

「助手席で口を開けて寝ていても怒らないか?」

そう返したら




シウォンは照れながら
嬉しそうに笑った。






シウォンはいつも正直だ。
自分の気持ちにあんなふうに素直になれたら、きっと僕の人生も変わっていただろうなと思う。


嬉しいときに嬉しいという表情ができるのは

それだけで履歴書に書けるぐらいの特技だ。


…少なくとも僕にとっては。






「じゃ、ここで」



シウォンがマンションのエレベーターの前で
そう言って立ち止まった。




このまま帰るのか?
部屋に来ればいいのに


そう頭の中では言えたんだけど
どうしても口が動かなくて





「…そうか」


それしか言えないで
あとは黙ったまま、シウォンがエレベーターのボタンを押してくれたのを見ていた。




昔から僕はそうだ。
二番目と三番目に欲しいものは「欲しい」と何百回も言えたのに
一番欲しいものはなぜだか言えなかった。



一番大事なことには
臆病になる自分の性格を

シウォンとこういう関係になって
数えきれない程感じてきた。


まただ。




やっぱりシウォンは少し寂しそうな顔をして(相変わらず顔を見ればすぐに心の中が読めるやつだ)

ほとんど同時に別の車でマンションに戻ってきた他のメンバーたちが
先にエレベーターに乗ったのを見送ったあと


柱の陰で僕を抱きしめて
壁に押しつけるようにした。



いつもより腕の力が強くて、息が苦しくなるぐらいだったから
シウォンの心臓が悲しそうに動くのもよく分かって切なかった。




…素直に

一番大切なものを『欲しい』って言いたかった。



「…ヒボムが」
エレベーターの扉が開いた瞬間、思わず口が動いた。

「ん?」

「ヒボムが…お前に最近会ってないからつまらないと言っていた」




「…いつ?」

「昨日の」


最後まで言い終わらないうちに、シウォンに腕を掴まれて

エレベーターの中でキスをした。




何度もキスをしたあと

階のボタンを押していないことに気づいて


二人で声に出して笑った。





「…ヒチョル兄さんは、素直な人だね」


動き出したエレベーターの中で
僕の肩を抱きながらシウォンが言うから

「どこが?こんなに素直じゃないのに!」

怒って返事したら



「僕の前では十分素直だよ」
って言いやがった。




…まあ、このキム・ヒチョル様が

世界でたった一人の前でだけ
素直な人間になってもいいか。




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