02/07の日記

22:57

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兄さんが
あんなふうに泣くのを

あの日僕は初めて見た。



会場のスクリーンに映った兄さんは
泣きじゃくる子どものようで


抱きしめてあげないと
ぼろぼろと崩れて
壊れてしまいそうに思えた。





小さく二回ノックして
兄さんの名前を呼ぶ。

北京のホテルの廊下は
少し暗くて

ドアを開けてくれたヒチョル兄さんの表情がよく見えなかった。


「…兄さん」


いつもなら
何の用だ、とぶっきらぼうに言う兄さんが

何も言わずに
僕の顔さえ見ないで

2つ並んだ窓際の方のベッドにもぐりこむ。



部屋は
電気もつけずに真っ暗なまま

カーテンだけが開いていて、街の灯りが部屋を少しだけ照らしてた。



「兄さん」

どうしたの?
なぜそんなに哀しいの?


…答えを知っている、そんな言葉は意味がないって分かってるのに
口からこぼれそうになる。

それでも

ステージから降りて
スタッフやメンバーとの夕食にも参加しないで
一人でホテルの部屋にこもった兄さんをほっておけなかった。


「ヒチョル兄さん」

もう一度話し掛けたけど
返事がなくて

「今日は…僕がルームメイトだから」

ベッドの足元に立ったまま、そう言ったら

ヒチョル兄さんが少しだけ頷いたように見えた。





「…寒くない?」

空いているベッドに腰掛けたら、小さく軋む音がして

僕に背中を向けたままだった兄さんが
ほんの少し身動ぎした。




「……っ」


微かに聞こえた泣き声に
自分でも驚くほど動揺した。

マイペースで
自分の気持ちに正直で
真っ直ぐで

いつでも僕らの『兄さん』だったヒチョル。



でも今目の前にいるのは

誰かが抱きしめて守ってやらなくちゃ立っていられないくらい

不安と寂しさを抱えた
一人の人間だった。





ゆっくり
ヒチョル兄さんの肩とシーツの間に右手を滑り込ませて

背中から抱きしめる。



兄さんの心に空いた穴と

僕の心にもぽっかり空いでしまった穴を

重ねて
ふさぎあうように。





抱きしめる僕の手に
兄さんの手が重なる。

二人が離れないよう、
鍵をかけるみたいに。




大丈夫だよ、兄さん

僕がそばにいる。





明けない夜は決してないけれど

その夜が
前が見えなくなるほど暗くて
不安で寂しくてたまらないなら


僕がずっとそばにいる。




朝が来て

兄さんがまた笑顔になるまで


ずっと。

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