05/11の日記

23:14

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ドラマの最後の収録が無事に終わって、
お世話になったスタッフや出演者のみんなと打ち上げがあった。


帰り道
僕は宿舎のマンションに寄り道をした。


エレベーターの数字を見つめながら

もう感触で覚えてしまった
鞄のポケットの中の合い鍵を探る。







「兄さん、遅くにすみません」



「なんだ」

部屋のドアを開けると

熱心にマンガを読んだまま、こっちを見ないで兄さんが返事をする。


いつもの光景だ。


「お土産にイチゴを買ってきましたよ」

「俺は今ダイエット中だ」

「じゃあドンヘたちに…」

「明日起きたら食べる」

そこに置いておけ、というふうに左手をひらひらさせる。

僕は笑いそうになるのを我慢しながら
(笑ったら絶対に怒られるので)

机の上にイチゴを置いた。




まだ
一回もこっちを
見てくれてない。



「最後の撮影が終わって、今日は打ち上げだったんですよ」

「…」


兄さんのお腹に乗っかったベンシンだけが、僕の顔をじっと見てる。



「兄さん、じゃあ帰ります」

ベットの側に立ったまま
ゆっくりそう言うと

ベンシンが僕を見て短く鳴いた。


「ん?」

腰をかがめてベンシンと目を合わせると

今度は長めに二回、甘えるように鳴くので

頭を優しく撫でてやる。

するとベンシンは僕の掌に頭をこすりつけるようにして、嬉しそうに喉を鳴らした。

ベンシンは甘えるのが上手だ。





「にゃあ」

「…?」

「にゃあー、にゃあー」

今度は、マンガ本で隠れた顔の方から鳴き声がする。


「にゃおーん!にゃお!」

途中からロックバンドのシャウトみたいになってるけど


照れ隠しなのは

ちゃんと分かってるから。




ベットに腰かけて

ゆっくりと兄さんの金色の髪を撫でる。


そのまま頬を撫でてあげると

ベットの上の
世界一美しい猫が

大きな目で僕を見上げて

くすぐったそうに笑った。




本棚の上にいたヒボムが短く鳴くと
ベンシンが兄さんのお腹の上から降りて机に飛び乗る。



この部屋にいる三匹の猫の中で
一番大人なヒボムに感謝して



一番素直じゃないヒチョル猫にキスをした。


引っ掻かれないように

ゆっくりと、優しく。

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