05/15の日記

00:19
drive
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「兄さん、着きましたよ」

助手席に向かって声をかける。


「……」


兄さんは
フロントガラスを睨むようにして、黙ったまま動かない。



ラジオの本番を終えて、僕が借りているマンションの駐車場に着いたのは真夜中過ぎ。



途中までは機嫌がよくて、
運転する僕の腕をバンバン叩きながら、
久しぶりのステージのこととか、筋肉痛になった足のこととか

ずっと話してたのに

マンションが近づくと
急に黙り込んでしまった。


「…?」

機嫌を悪くした原因を考えてみたけど
まるで思いつかない。


とりあえず車から降りて
助手席の方にまわる。



「兄さん」
もう一度声をかけてみる。


すると
前をじっと見たまま
兄さんがつぶやく。





「…プリン」


「え?」

意味が分からなくて聞き返すと、また兄さんが不機嫌そうに答える。


「プリンが食べたい」


「プリンですか?」

聞き返されるのが兄さんの嫌いな行為だと分かっているけれど

もう一度聞き返した。



「そうだって言ってるのに分からないのかお前は」

「…すいません。じゃあ明日の朝買いに」

「明日じゃない!俺は今食べたいって言ってるんだ」

「分かりました。すぐ近くに店があるから、僕がちょっと行って買ってきます」


動き出そうとしたら、ようやく兄さんがこっちを向いた。


「ダメだ!俺はプリンは決まった店のしか食べないんだ」

「どこのですか?」

「ここからなら、車で20分ぐらいだな。この時間でもやってるから大丈夫だ」


じゃあ車で買いに行きますか?

そう僕が言うと
ヒチョル兄さんの機嫌が急に良くなった。



プリンを買いに行く車の中で

ヒボムとベンシンの話から始まって
ラジオに来た面白いゲストの話

twitterの話に
デジタルカメラの話

ジェイが最近少し太った話とか
新しくデビューしたアイドルの女の子たちの真似とか

さっきの機嫌の悪さが嘘みたいに
歌ったり笑ったりしながら話しまくる。





往復で40分

マンションの前に着くころになると

なぜかまた
兄さんのテンションが低くなって


ようやく
不機嫌になる理由が分かった。




「兄さん」

「…分かってる。着いたんだろ」

「ドラマの撮影で、夜景の綺麗な場所を見つけたんです。今から行きませんか」

「…」

「ちょっと遠いんですけど。もう少しだけ、二人でドライブしませんか」

ヒチョル兄さんの顔を覗きこみながら
なるだけさりげなく、そう提案すると


「…まあ、つきあってやってもいいけどな」


運転席と反対側の窓に顔を向けたまま
兄さんが答える。



窓ガラスには

嬉しそうな兄さんの顔が映ってた。

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