F/Alchemist
□モノを介してなら呼べる
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「そうですか?まぁ、女の子にゾルフは無いか。ね、少佐。」
笑いながらアーデルハイドは私を見る。
今は余りこちらを見ないで貰いたいのだが。
「少佐?」
「…なら、アディなんて言うのはどうですか?」
「ッ!」
「アディって可愛いじゃないですか。」
平静を装い、言ってやるとアーデルハイドの頬は朱に染まる。
「おや?貴女の事を言った訳じゃないんですがね。」
大袈裟に肩をすくめて意地悪く笑ってやる。
ささやかな仕返しだ。
「分かってます!」
アーデルハイドはふんっと明後日の方に首を振った。
「いいもん。可愛い名前ちゃんと付けて上げますもん。それまでコレはゾルフ(仮)でいかせて頂きます!」
勢い良く振り返った彼女はベーッと赤い舌を覗かせた。
「ねー。ゾルフ(仮)〜。」
「(仮)って…。」
思いもかけず出た深い溜め息に、私は改めて肩を落とした。
その勢いで私の事も呼んでくれればいいのに――
あとがき―――
名前って大切ですよね。
呼ばれる相手によって自分の気持ちに変化があるから不思議。