□永久の別れを
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大切な戦友が天に召された。


勤務中に起こった事件だという事で、彼は二階級特進。
つまり、准将に昇進だそうだ。
そんなもの彼が喜ぶだろうか。




晴天の墓地。
沢山の参列者。
軍をあげての立派な葬儀。
その人数は、彼がどれだけヒトに愛されていたかの証拠だ。
皆涙をこらえ、彼を見送った。


「どうしてパパを埋めちゃうの?」


墓地に響いた一言。
それは、まだ死の意味を知らない幼子の一言だった。
これを耳にした大人達。
死の意味を嫌と云うくらい知っている者達は、一斉に涙腺を緩めむせび泣く。

そんな中、泣きもしないでぼんやりと墓を眺める人物がいた。



葬儀からしばらく経って、私は中央の勤務となった。
異動の手続きや引き継ぎなどを済ませ、最近ようやく生活がある程度落ち着いた。
そんなある日、私は軍務の間をぬってとある家を訪れていた。

高い鉄柵に囲まれた屋敷。
来客を拒むような出で立ちの屋敷の玄関先で、幾度呼び鈴を鳴らしたことか。
居るのは分かっているさっさと出ろ、としつこい位に鳴らし続けてやる。
すると扉は開かれ、昼もとうに過ぎたのに家主は寝起き姿で現れた。


「ハイハイ、うるせぇですよー…!」


彼女は私を見上げて息を飲んだように思えた。
だがそれはほんの一瞬だけで、すぐに非の打ち所のない笑みを浮かべる。


「やーい。いらっしゃーい。出世おめでとー。」
「…やーいってなんだ。」
「忙しいんでしょ?」
「まぁな。」
「だから、やーい。」


やーいやーいと両手を挙げて繰り返す年齢よりも遥かに幼い行動をとる女。
私はついついそんな彼女の頭を、子供か!と叩いてしまった。

そうここは彼女の、アーデルハイドの家である。




 
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