□フラフラ
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薄茶色のレンガ製の家が立ち並ぶ町の中を目的地を探してフラフラ。
フラフラ、フラフラ歩いていた。
道が分からず、軽く迷子になりかけていたら本当にフラフラしてきてしまった。
目が回り、胃の中もひっ掻き回されたかのようになり気分最悪。
ついには道端に座り込んでしまう始末。
軍服を着ていなくて本当に良かったと思う。


「ああ、私駄目な子…。」


少し休もうと近くの建物の影に入り、壁に寄り沿い地面に腰を落とした。


現在、私はたった独りでの任務の途中だった。
イヌも連れずに一人でだ。
軍服を脱ぎ、イシュヴァールの女の格好をして街をさ迷い数時間。
初めは顔を隠していたのだが、白い肌をみても彼らは特に気にしないようだった。
たまには、敵の血が混ざっていると罵声を浴びせてきた者も存在した。
だけど、親を殺され中央から逃げてきたのだとホラをふけば、それ以上は言わなくなり、むしろ哀れまれるという予想外の結果になった。

妙な感じだ。
戒律で他の部族と交わるのを禁じているのに、混血の子は受け入れる。
過程は駄目だが、結果は良いのか?
試しに道を歩いていたひとりの僧を捕まえ疑問を問う。
すると、

「確かに禁じてはいるが、生まれた命に罪はないからな。」

悩みもせずに言われてしまったものだから、更に訳が分からなくなってしまった。
きっと訊ねた僧侶が懐が深かったのか、ただのお人好しだったのだろう。


「あー…ついでに道も教えて貰えばよかった。」


空を見上げなくとも感じる太陽。
大地を渇かす存在は高い場所から下りつつあった。
街に着いたのは朝方だから、おおよそ半日はこの街に居たことになる。
それでも目的地に着けないなんて。
私いつの間に迷子スキルを身に付けたのだろうか。


「ぅえー…しんど…もう帰りてぇ…。」
「大丈夫かい?」


頭上からの声に頭を跳ね上げれば、逆光の中に人影が佇んでいた。
光に透かされた金髪が輝き、眩しい。


「誰…。」


光に手を翳し、目を凝らした。
声をかけてきたのは金色の短い髪をしたこの土地に居るはずのない人間。
そして、よく見れば汚れた白衣を纏っている。

助かった。
探し物があちらからやって来てくれた。




 
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