□白の来訪者
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出掛けていた間、二階の窓を開けていた。
だが、それでもまだ家の中は埃っぽい。

これは根気よく掃除に励まなければ!
そんな庶民的な決意を胸に、私は体を寝台に横たえる。
汚れていようが、自宅のベッドは落ち着くことには変わりない。
早くも挫折か、私?
イイんです。
明日からやります。

寝返りを打つと目に入ったのは、椅子に引っかけられた先程まで着ていた白いジャケット。
白は嫌なモノを思い出させる。
そのくせ、好んで纏っているのだから笑える。
私は視線を天井に移した。


「これからどーしよ。」


先日、活動宣言を出したものの、自分が今後どう行動すべきかメドが立たなかった。
もう何を企んでいるのかバレてしまったのだから、いっそ思い切って動いて敵を撹乱させてやろうか。
だが、これはもう子供のイタズラではないのだ。
奇襲を掛けるなら、仲間と足並みを揃えなければならない。


「というか、私は何がしたいんだろ…。」


取りあえず、真実は知った。
ならば、次は友の仇討ちだろうか。
それとも、腐った軍を粛正し、国を守る事だろうか。
この国を、軍を、人造人間をこのままにはしておけないのは間違い無いのだ。


「けど、どれも違う気がする…。」


五里霧中、暗中模索。
いや、私の周りは明るく晴れて風景はハッキリしているが進む方角が定まらない。


「…最初の一歩。」


まずはハボックの怪我の治療法を考えてみよう。
考えを落ち着けた頃、手の中に何かがあるのに気が付いた。
小さい金属製のソレ。
いつの間にか、手持ち無沙汰の手が首から掛かるソレを握り締めていたらしい。


「…。」


家中の掃除を機に白い服も、捨てられず取っておいた物も捨ててしまおう。


―――カラン


遠く、玄関の方から呼び鈴の音が聞こえた。
部屋の扉を開けて、廊下を真っ直ぐ歩いていけば玄関だ。
けれど、もうその距離を歩くのもダルい。
ダルいのにカランカランと呼び鈴が鳴り続けている。
もしこれが友人の仕業ならば、きっと私が出迎えに出ていくまで鳴らし続けるだろう。
暇無いくせに暇人め。


「よっこらせ。」


私はダルい体を起こして、長い廊下を玄関に向かって歩いた。





 
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