□私にもわからない
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レイブンが行方不明になったと報告を受けてすぐ、私達は車に乗って麓の駅に向かった。

車中でキンブリーに理由を訊ねると、

「お客様を迎えに行くのですよ。」

とだけ返された。
お客様とは誰なのだろうか。
わざわざ彼が迎えに出るのだからレイブンの代わりかもしれない。
手回しの良い彼の事だ。
しかし、それでは私の知らぬ内に大総統に頂いたという権限が意味をなさなくなってしまうのでは?
道々考え込んでいた私を一瞥してキンブリーは言った。

会えば分かると。





「お待たせしました。」


軍用車が駅へ到着すると、キンブリーは雪の降る屋外から暖房の利いた待合室へ赴いた。
そこで肩身狭そうに長椅子に腰掛けていた少女が振り向く。


「ウィンリィちゃん…。」
「え、アディさん!?」


軍服を纏った厳つい男達に囲まれ座っていたのは、鋼の兄弟の幼なじみウィンリィだった。


「お久しぶりです。」
「久しぶり…。」


少女は、どうしたんですか、その髪の色?などと訊ねてくるのだが、すぐに返事を返してやれなかった。

―――用意周到過ぎる。

驚愕を隠せないでいる私を余所に、会話は続いていた。


「おや、ロックベルさん。コレの事をご存知で?」
「はい。以前に少し。」
「そうでしたか。まさかとは思いますが、貴女にご迷惑をお掛けしませんでしたか?」
「少佐…ッ!!」


私は子供か!




そうして、鋼の兄弟の居るブリッグス砦に向かう事になったのだが、問題があった。
私達が乗ってきた車は四人乗り。
運転手にマイルズにキンブリー、ウィンリィに私では席が足りない。
詰めれば全員乗れるかもしれないが、窮屈だ。
そしてこの場合、お客様であるウィンリィ嬢は指揮官達が乗る車に乗るべきなのである。
ならば、私の行う事は決まっている。


「私は別の車に乗りますから。」


そう断れば、ならば私に運転しろ、とキンブリー様は仰いました。
なので、(慣れない道+雪)×ペーパードライバー=死!
という至極簡単な公式を丁寧に解いて差し上げました。
それでもまだご不満ってどういう事だ。

でもって、砦に到着してエドワードの機械鎧の換装が済み、いざ本題へと移ろうとした時彼はこう言った。


「私の好みです。」


このキケンな台詞にエドワードも目を剥いた。
キンブリーの奴め。
やたらと真剣に機械鎧の整備の様子を眺めているなと思ったら、視線の先はうら若いお嬢さんだったのか。
そういえば、彼女にはやたらと優しかった気がしなくもない。


「むぅ…。」


僅かにだが胸が悪くなる。
変態性癖の疑いの眼差しを向けるそんな私達に対して、キンブリーは冷静に返した。


「私、ロリコンの気はありませんから。」


だから、安心してくれ。
と言わんばかりだが、安心するより早く口が先に動いていた。


「不潔よ不潔!男って結局は若い娘が良いのネ!サイッテー!」
「……アーデルハイド。」
「いーやーっ!幼女趣味!」
「貴女は何を…」
「キンブリーは実はつるぺたが好みだった!?キャーッ、ロリータコンプレックス!!」
「黙れ。」


殺気の帯びた一言に、思わずウィンリィの消えていった整備部屋に駆け込んでしまった。
だって、目がマジだったんだ…。
ほんのイタズラだっていうのに。




 
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