□悔い
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声がする。


「コイツも拾っていくのかよ。」


見当が付かない不思議な声で目を覚ました。
誰の声だろうか。
上から降ってくる声は聞き覚えもあるような、でも記憶しているものとはどこか違うような気がする。
けれど、そんな事今の私にはどうでもいい。
静かにして欲しかった。


「キンブリーのイヌだぞ?」


会話の中で挙げられた名前に反応して、私は重い瞼を押し上げていた。
しかし、視界は光が足りないのか、私の目がおかしいのか、擦りガラスを通したかのように不明瞭だ。
ぼんやりとだけ大柄な人影らしきものが見える。


「生きてるみたいだな。」


その人影が近づき、体の下に支えが入ったかと思えば、胸部に激痛が走る。
体が宙に浮いた。
おそらく声の主が私を抱え上げたのだろう。
体の線が丸くなると、脇腹が刺されたように痛む。
いや、多分何かが刺さっている。
この親切で加えられた痛みに足掻いた手が声の主に触れた。
しかし、触れているのは毛皮のような触感であった。


「ぐ、げほっ…。」


食道を熱い物が逆流しようとしているのが感じとれる。
圧力と熱さに逆らいきれず咳き込めば、口元が汚れた。
口の中も鼻腔の奥までも鉄臭い。
ああ、息苦しい。


「こんな奴どうするんだよ。」
「…使えるかもしれんだろ。」


抱え直され、私は移動させられる。
彼らは、不本意ながらも私を助けようとしてくれているらしい。
でも、もう、いいからほっといて。




 
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