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□雌獅子と犬の真冬の決闘
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寒い寒い冬のブリッグズ砦。
人間に非常に厳しい環境にそびえ立つこの堅牢な砦は、建物内とはいえ完璧には暖かくなかった。
そうすると、寒がりな私は生理現象が近くなるものでして。
「…あのォ、なんなんでしょーか?」
私一人、用を済ませトイレから出るとブリッグズの兵士が二人、入り口を固めていたのだった。
そして、ハンカチで手を拭きながら出て来た私を睨み付けた。
「豺狼の錬金術師殿、アームストロング少将がお呼びです」
なんて、慇懃に言われたのだけど、対応は強烈に真逆である。
「……これじゃ、虜囚みたいじゃね?」
じゃなかったら、人質だ。
私の後ろについた兵士は、私の腰の辺りに拳銃を突きつけている。
どう考えても士官にとる態度ではない。
もしや、キンブリーへの対抗策のつもりなのだろうか。
「ねぇ、閣下は何のご用事なのよ」
「いいから歩いてください」
欲しい答えは帰ってこない。
逃げてもいいが、彼らは女王様の忠実なる下僕。
私の足くらい平気で撃ち抜くかもしれない。
「一体どこに行くつもり?」
と、前を行く兵士に訊ねてみても返事はない。
キンブリーにはちゃんと断って一人で行動したのだが、自主的には戻れそうもない。
処分されない事だけを願って、取りあえずついて行くしかないようだ。