◇F/Alchemist

□たまには立場を入れ替えて
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「アーデルハイド。すみませんが、家まで送ってください」


夜通し仕事だったキンブリーに頼まれて、私は車を出した。





通い慣れた道を通り、見慣れた家の前に車を停める。
しかし、エンジンが切れ、振動も収まったのに後部の人物は車外に出ようとはしなかった。
疑問に思い、後部座席を振り返える。
キンブリーは腕を組んで俯いたまま動かない。
なんということだ。
これはいわゆる『荷物』の状態である。


「お客さーん」
「…」


返事が無い。
ただの寝こける変人のようだ。
道中静かだったのはこういう事だったのか。

寝かせたままには出来ない。
私は車の後部に回り、座席に寄りかかり眠るキンブリーの肩を揺すった。


「少佐、しょーさ?ご自宅に着きましたよ」
「…ああ…」


聞き慣れないとぼけた声で応えて、目をこする。
駄目だ、こりゃ。




 
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