◇F/Alchemist

□私の可愛い…
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彼女が外への使いから戻ってきた。
だが、どういったワケかオマケがついてきた。






私はお使いも終えて、意気揚々と上司の執務室に飛び込んだ。


「見て見て!クマ!」
「おや、一体どうしたのですか?おかえり」
「ただいまです!」


部屋の中で仕事をしていたキンブリーが本から顔を上げる。


「里子に貰ったです」
「里子?」


疑問を表情に出す彼にもよく見えるように、私は執務机に着くキンブリーの近くへ寄った。
この手に抱き上げられた三十センチ程の大きさのぬいぐるみ。
アイボリー色のふかふかの毛皮に、首に巻かれた萌葱色のリボンがとっても可愛い代物だ。


「里子!新しく縫ったから良かったらって。クマー」


私はクマの両手を広げて、キンブリーに向かって伸ばす。


「ボク、今日からアディさんのウチの子になるクマー」


いいだろー!と続けると、キンブリーの眉間にシワが寄った。
そして、返事は長い溜め息が一つ。
ええ、わかってましたとも。
ウチの少佐殿にツッコミなんて期待してませんのことよ。
キンブリーは頬杖をついて心底呆れたようにクマへの感想を呟いた。


「本当、女性はそういった物が好きですよね。特に貴女」
「ええ、好きですよー。大好き」


だって、可愛いもん。
一層強く抱きしめて、クマの耳の間に鼻を埋めてみる。
もう肌触り抜群。


「男の子だって、ただ素直に可愛いって出来ないだけなんじゃないかなぁ」


なので、身近な男のヒトがぬいぐるみを可愛い可愛いと撫でて、ギュッとしている場面を想像してみた。


「……ウワァ」
「今、そのぬいぐるみを抱き締めている人物の想像に私を使いましたね?」
「つ、使ってない!使ってないヨ!それに、なんで想像してるとか思うの!?」
「この顔を見ていれば分かりますよ」
「アイタ!」


頭を本で叩かれた。
なにも角で叩かなくったっていいじゃない。


「さあ、気が済んだなら仕事をしなさい」
「はーい」


叩かれた場所をさすりながら応えた。

それにしても、考えが顔に出ているということなのだろうか。
いい加減ポーカーフェイスの勉強しよう。
そうしよう。
でも、無表情になっちゃったら私の可愛さ半減じゃない?
だったら、逆にいつもニコニコしてようかしら。


「アーデルハイド、妙な考え事は止めてさっさと仕事なさい」
「…はーい」


なぜバレた!




 
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