◇F/Alchemist

□実はそこそこ心配は…してない
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何遍も言うようですが、人間、眠気には勝てないものです。
だから、無敵とまでいかなくてもそこらの男子より強いと自負している私でも、眠いとうっかりこんな状況に陥るのです。
いくら眠かろうと、

『アーデルハイド、いいですか?しっかり目を開いて、気をつけて帰りなさい』

そう言われた通り、気をつけなければいけないのです。



眠い眠い眠い眠い…。

おそらく、私の口からはその呟きがだだ漏れていたに違いない。
それほどに今の私は眠かった。

ワタクシ、書類を書くのは慣れています。
だって、錬金術師だもの。
自分の研究を纏めるのに必要なのは、紙とペン。
タイプライターなんてもってのほか、紙とペンは何時でも何処でもどんな体勢でも考えを書き留められる便利な素敵アイテム。
…そんな話ではなくて、自分の研究成果を纏める仕事のおかげで、通常の書類仕事程度ではメゲない耐性を身に付けているのだ。

だが、如何せん今回は量が多過ぎた。
書いても書いても書いても書いても終わらず、むしろ次々と追加され、仮眠の時間も取れずに勤務時間の終わりを迎えてしまったのだ。
それでも残業で仕事を続けようとしたら大事な上司に、

『そんな状態では役に立ちませんから、貴女はさっさと帰りなさい』

とか言われるし。
結局仕事は残ったままだし、散々である。


「眠くったって残業くらい、出来るのにさ…」


自分だって眠いくせに、ろくに仮眠もとっていなかったくせに。

そんなこんなで悪態吐きながらの仕事帰りです。
私は、半分寝たような状態でノロノロとお昼の街を歩く。
ああ、サンサンと輝くお日様が憎たらしい。
帰ったら、暗幕ぴっちり引いて夕方まで寝ちゃうんだからね。
帰宅後の安眠計画を考えていたからか、私はその場の状況というか、自分に迫ってきた危機に気が付かなかったのだ。


「っ!?」


突然の背後からの衝撃。
何者かが全力で体当たりしてきたらしい。
油断しまくっていたおかげで、体が大きく前のめった。
だが、倒れかけの体は反射的に振り返ろうとする。
しかし、それより早く肩越しに太い腕が巻き付いてきて上手くいかなかった。


「てめぇら、近付くんじゃねぇ!」


そして、この怒鳴り声。
巻き付いた男の手には、なんと拳銃が握られていた。

それだけの材料があっても、当初は何が起こったのか分からなかった。
が、次々集まってきた軍警などの姿をようやく見て目が覚めた。


「この女がどうなってもいいのか!?」


私、どうやら人質にされてしまったらしい。



 
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