F/Alchemist

□役職・少佐付き…
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「此処と其処の訂正を。」
「ぬぅ…。手厳しいですね。」
「仕事はきっちりなさい。」
「はい…。」


私の書き上げた書類を見て、訂正箇所を指示するのはキンブリー。

あれ?
おかしいな。
普通書類チェックをして、ミスを見付けるのは私の仕事の筈なのだが。
なんでか私が怒られてるぞっと。

などと考えながら、私は視線をキンブリーから逸らした。
私の目の先にあるのはまさに山積みの書類。

ここ最近、やたら仕事が溜まるのだ。
それは、決して私が溜めているからではない。
他の所から上がってくるのが!遅いのだ。
あれ程早めに出してねと、私がお願いして回ったのに。
皆が皆、ギリギリなものだから、なかなかどうして片付かない。
ああ…私も余所様に迷惑かけないようにしなくては。

しかし状況を確認し、己を戒めようととった私の行動を彼はこう取ったようだ。


「ああ。もう書きたくない…と。」
「いえ!そんな事はないのです。」


私は慌てて手を振った。
とんでもない誤解だ。
確かに書きたくは無いが、別に怠けたいとか思った訳じゃない。


「そうですか。でしたら構いませんが…。」


そこまで言って、キンブリーは話すのを止めてしまう。
しばらく私を見つめた後、左手で顎をひと撫で。


「まぁ、貴女の分も私がやってしまえば早いのですがね。」


何を思ったのか、キンブリーは眉をひそめて言った。
私といえば、まさかそんな台詞がくるとは思わず焦ってしまう。


「結構です!大丈夫です!問題ありません!」
「なら、お願いします。」
「はいっ。」


書類を引ったくるように受け取った。


それから、がりがり書類を書き続けて約二時間。
気付けば定時を過ぎていた。
おおっと、このままでは締め切りも過ぎてしまう。


「私はこの書類を提出して来ます。少佐はもう上がりですね。お疲れ様でした。」
「お疲れ様。」


私は一礼して忙しなく部屋を出た。



 
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