F/Alchemist

□飲み過ぎご注意
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現在、私は身動きがとれない。

何故なら、背の下は柔らかい寝台。
胸の上には固い男の体が覆い被さっているからだ。





今日は一緒に上がれるからと、私はキンブリーに誘われ食事をして帰る事にした。
食事を済ませて、食後のお酒を飲み始めた。
だが、私が酔う前にキンブリーが酔ってしまった。
店を出てからは平静を装っているのだが、酔いの回った人間特有の危うさが付きまとう。
仕方なく、キンブリーに肩を貸してどうにか寝室に運んだものの、今度はいきなり私ごと倒れ込まれてしまいこの有り様。

ねぇ、フツー逆じゃない?
女の子が酔っぱらって、男が送り狼でアオーン!じゃない?
なのに、当の男は私にのし掛かかったまま微動だにしない。
いや、期待なんか一切していないけど。


「…むぅ…。」


兎にも角にも、おかげで身動きが取れない。
しかも、キンブリーの手が背に回っているから、色事と言うよりタックルされてホールドを掛けられている気分である。
全く、格闘の訓練じゃあるまいし。


「重いんですけどぉ〜…。」


私は天井を睨みながら言ってみた。
だけど反応はなく、耳のそばで規則正しい呼吸が聞こえるだけだった。


「ねぇ、少佐。寝ちゃったんですかぁ?」
「……。」


やっぱり返って来るのは寝息だけだ。
だけど、力の抜けた人間ってなんでこんなに重いんだろうか。
なんとか自力で立っていてくれるのなら支えられるのに、本当不思議だ。


「おーきーてー。」


彼はトレードマークの白スーツも着たままだ。
早く脱がさないとシワになってしまう。
シワシワヨレヨレの服を着たところなんて想像できない。
あ、でもちょっと見てみたい。
けど、やっぱり自由になりたい。

―――いっそ、下に落としちまえ

ふと、悪い私が頭の中で囁いた。
ベッドから落とせば私は自由になれるし、相手も目も覚めるハズ。
万々歳でお家に帰れ……ないな。
実行したところまで考え全身に鳥肌が広がった。
きっと私も床に落とされて、仕返しの割増サービス間違い無し!
よって、落とすのはナイナイ。




 
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