F/Alchemist
□まいすいーと
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私達は先刻からずっと書類に向かっていた。
仕事でどうしても必要なので、かれこれ二時間近く机上に山積みのファイルを読み込んでいるのだ。
執務室に書類を持ち込んで、私は自分のデスクに座ってずっと読んでいた。
読むのは苦ではないが、やっぱり疲れる。
一時間経過で引き出しから眼鏡を取り出し装着。
それから三十分ほどしてカフェオレを入れたマグカップが空になった。
そして、二時間目には普段開けられない二番目の引き出しを開けていた。
引き出しを半分も開いていないのに甘い香りが鼻に付く。
その正体は箱に敷き詰められたチョコレートだ。
頭を使うとどうしても糖分が欲しくなるので甘い物は必需品。
特にこのお高いチョコは私のお気に入り。
だから、いつもこの二段目にしまってある私のマイスイートハニー。
うん、愛してる。
私は紙を見たまま、可愛らしい造形のチョコをひとつ摘んで口元に運ぶ。
「いい加減にしないと太りますよ。」
離れた場所からぼそりとそんな呟きが聞こえた。
私は声のした方向へ視線を向ける。
そこに居るのはキンブリーで、やっぱり私と同じようにファイルを読んでいた。
彼はこちらを見ていないから話しかけられた訳じゃないらしい。
しかし、彼は今なんと言った?
なんか、こう…聞き捨てならない単語が聞こえなかったか?
私は、一旦はキンブリーに向けた視線を机の引き出しに落とした。
二十四個に区切られている箱の中身が半分以下に減っている。
引き出しを開けた時にはこの二十四の穴は全て埋まっていたのに。
「…。」
お腹もそこそこ一杯だ。
「……。」
やちまったい。