F/Alchemist

□モノを介してなら呼べる
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天気の良い、いつも通りの朝だった。
だが、この足下に絡み付く毛玉はいつもとは違う。







「おはようございます。」
「おはようござい…犬だ!」


彼女の反応は予想通りのものだった。

私を、いや私の腕の中の犬を見つけたアーデルハイドは駆け寄ってきた。


「これ、この仔どうしたんですか?」
「ついて来てしまったんですよ。」


溜め息混じりに私は答えた。
そんな私に構わず、アーデルハイドは子犬に手を伸ばした。


「首輪はしてないし、汚れてるし、野良かな。少佐はどう思います?」
「間違い無く野良でしょうね。」


私の腕の中で暴れる小さい獣を彼女に差し出した。
それを受け取ったアーデルハイドは幼い子供のように目を輝かせた。


「少佐が飼うんですか?」
「まさか。私は貴女に押し付けるつもりで拾って来たんですよ。」


アーデルハイドは目をぱちくりとさせた。
断るだろうか?
普通なら断るだろう。
その場合、子犬は保健所に行って貰うしかない。
それがこの獣の運命だったという事だ。

しかし、彼女は嬉しそうに笑って子犬を抱きしめた。


「よし、今日からお前はうちの子供だぞ。」


汚れた獣に頬を当て、鼻先に唇を寄せる。
それに少し苛つきながら私は席に着く。


「少佐、ありがとうございます!」


このはしゃぎよう。
まさにプレゼントを貰った子供だ。


「どういたしまして。」


そう素直に礼を言われると調子が狂う。
アーデルハイドも浮かれながら己の席に付き、机の上に子犬を置いた。 


「まさか本当に二つ返事で引き受けて貰えるとは思いませんでしたよ。」


私は書類のファイルを開く。
彼女は指で子犬の口をこじ開け中をのぞき込んでいた。



 
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