F/Alchemist

□外回りって嘘ついた。
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人でごった返す中央の駅のホーム。
大きい男と小さな女の二人は同じように右手を上げ、嬉しそうに笑っていた。


「よ!久しぶり〜。」
「よ!元気だったか〜。」
「…お前ら、一体何故此処にいる?」


列車から降りてきたばかりのロイは自分を出迎えた二人を見て溜め息をついた。


「何ってお迎えに決まってんじゃねぇか。」


男、ヒューズは豪快にロイの背中を叩いた。


「迎えって、私は今日中央に行くなんて一言も連絡していないぞっ。」
「それは私の個人的な情報網のおかげですよ。」


Vの字を作って胸を張る女、アーデルハイドは歯を見せて悪童のように笑う。


「個人的……。」
「まぁ、気にすんねぇい!」
「そーだそーだ。細かい事なんか気にしちゃいけねぇ!」


駅についた瞬間よりも更に肩を落としたロイは、両脇を二人に固められホームを後にした。




停めてあった車の運転席に誰よりも早く座ったのはアーデルハイドだった。
彼女はさっさとハンドルを握ると、窓枠に肘をついて少しダルそうに喋る。


「お客さん、中央司令部で宜しいですか?」


タクシーの運ちゃんのモノ真似らしい。


「あぁ。頼むってお前が運転するのかっ!?」
「そうですよ、マスタング君。ほらマースもさっさと乗らないと、捨ててっちゃうよん。」


アーデルハイドはにっこりと後部座席を指差す。

そいつは困る、とヒューズはそれに従いスルリと後部の扉を潜った。
しかしロイは開いた扉の前で汗を流し、難しい顔をしている。
そして魔窟の扉を潜るかのごとく、慎重に車に乗り込んだのだった。


「…大丈夫、なのか?」


乗り込んだものの、ロイは青い顔で運転席のアーデルハイドを睨む。
正反対に彼女は笑顔で座席を振り返った。


「ロォ〜イ。いつまでも昔の事を引きずってちゃモテないよ〜。」
「ん?なんだなんだ。二人だけの秘密か。」


ロイは苦虫を噛み潰したかのような表情で口を開いた。




 
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