F/Alchemist
□悋気の紅
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「…ヘックシュ!ぅ〜っ。」
先程から度々くしゃみが出る。
今のなどは三回連続で出た。
…これは噂されてるな絶対。
「お大事に。」
いまだムズムズする鼻をすすっていると、横から声がかけられた。
「アーデルハイド、くしゃみ三回は何を意味しているか知ってますか?」
「噂されている、じゃないんですか?」
しかも、悪い噂。
「噂は噂でも、誰かに惚れられているらしいですよ。」
キンブリーはこちらを見てニヤリと笑った。
…これは、このヒトなりの冗談なのだ。
なのに、彼の言葉で自然と頬が熱くなる。
「やったね!私モテモテだぁ〜。」
照れ隠しのつもりでおちゃらけてみたものの、
「それはそれで、困ってしまうんですがね。害虫駆除が一苦労ですから。」
と、顎をひと撫で。
ンな真面目に返されてはやりようがない。
「…私、ちょっとお手洗いに行ってきます。」
私は逃げるようにしてその場を離れた。
なんであのヒトは、ああもぬけぬけと言えるのだろうか。
鏡の中の私の顔は真っ赤かだった。
自分は茹で蛸にでもなったのかと、真剣に疑ってしまう程に。
顔の熱は扇いでも、洗っても下がらない。
そのせいで、私は大分長い間お手洗いに居たようだった。
えぇい、いい加減慣れろ私!