F/Alchemist

□お礼は十倍返し
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五分程前からしつこく続くしゃっくり。
それが始まった頃から、アーデルハイドはキンブリーをぼんやりと眺めていた。







少し前からキンブリーの肩が、小さく跳ね上がっていた。
その度に、不愉快そうに眉が潜められたり、喉元に手が当てられたりしている。
いくら生理現象といえども内心では、
「自分格好悪いなー。」
とか思っているに違いない。

だから、一応見ない振りはしているのだけど。
やっぱり気になるのだ。
だって、奥さん!
こんな珍しい光景、なかなか見れませんよ!




「ック……さっきからなんですか?」
「いえ、安心しました。」


キンブリーはやっぱり、私が様子を眺めていた事に気が付いていたようだ。
何とも言えない表情でこちらを向いた。
そして、私の言葉に眉をひそめるキンブリー。
心配するのなら兎も角、安心というのはどういう事か。
と言いたいのだろう。
だが、口を開けばヒクッと声が上がるので、文句も言えないのだ。


「こーなんだかホッと?」


私は己の胸に手を当て首を傾げた。
なんだろうか、この感覚。
面白いなぁと思う反面、何か安堵というか妙な感覚が胸にあったのだ。
本当、なんだろコレ?


「……ああ!」


私は胸の前で手を打ち合わせた。


「少佐も人間なんだなぁって感じ?」
「…アーデルハイド。言っていて失礼だと思いませんか?」


私は頭を横に振る。
その様子をキンブリーは無言で見ていた。
妙な所で素直だな…。
細められた目がそう訴えている気がする。
ええ、そりゃ素直にもなりますよ。
だって、今の貴方は怖く無いんですもの!


「でも、イメージの問題とかありますから。止めましょう、そのしゃっくり!」


握り拳を掲げて言ったら、冷ややかな眼差しで長ぁく溜め息をつかれた。
…もう少し突っ込んでくれてもいいと思うンです。





 
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