F/Alchemist

□恋情落手
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この一週間、私達は冷戦状態だ。



キッカケは些細な事だった。


「なんでそんな事まで、指図されなきゃいけないんですかっ。」


友人の男と親しげにしていたら、キンブリーに叱られたのだ。
そう食って掛かれば、寝ぼけた事を言うなとまた叱られた。


「当たり前でしょう。」
「だからなんで!」
「貴女が私のものだからです。」


さらりとそんな事を言われてしまって、言葉に詰まったのがいけなかった。
キンブリーは、自分の勝利を確信したように口元を歪めたのだ。
その笑みにカチンと来た。


「…分かりました。男性と仲良くしません。ええ、しませんとも!」


あの日、私は指を突き付けタンカを切ってやったのだった。




それが一週間前。


「…。」


日程の事で余所の人間と話をしていたら、離れた所から視線を感じた。
またキンブリーだ。
今日は何も言わず、私の一挙一動を目で追ってくる。


「それじゃ、宜しくお願いします。」


話を切り上げて、振り返ればキンブリーはやっぱり私を見ていた。
つい、振り返るまでは浮かんでいた笑みを顔から消してしまう。


「…っ。」


するとキンブリーは眉をひそめて、ふいと視線を逸らしてしまった。
またやってしまった…。



私は、翌日から例のタンカを実行に移した。
男性への接触は、差し障りの無い程度に自粛。
そして、キンブリーには必要な最低限の言葉しか話さない。
いつものように笑いもしなければ、目も合わせない。
殆どの関係を絶つという、ほぼ無視の状態。

男と仲良くしちゃいけないのなら、キンブリーも含まれるべきである。
なんて思ったのだ。
頭にきていたのもあるが、そんなもの単なる意地だ。
抗議があったらすぐに止めるつもりだった。
だけど、キンブリーもならば受けて立つという様相で。
そうなると、人間は更に意固地になるもので。

どうせ、子供じみた反発だ。
ほっとけば、折れてくるだろう。
絶対!ヤツはそう思っているんだ。
そんな考えは甘いと後悔させてやるんだからっ!
という感じでこの一週間が過ぎた。




 
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