F/Alchemist

□狂恋 燎原の火の如く
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友人に久し振りに飲みに誘われた。
けど、行き着けが満席で、仕方無く酒と料理を買い込んで友の家に行く流れに。
その流れにちょっと罪悪感があったけど、結局お酒の魅力が勝った。
……勝ってしまった。
そうして、私は昨晩友人の家で夜明かしをしたのだった。
やぁ、飲んだ飲んだ。
今日が休みで助かった。


「えへへ〜。たりら〜り〜ん〜。」


そんな訳で、私はアルコールでぼやけた頭のまま、たらんたらんと昼の街を歩いていた。

車道を挟んだ向かいの歩道に白い物体が見えた。
物体は此方を向いて立ち止まる。
そして、怪訝な声で私の名を呼んだ。


「…アーデルハイド?」


一気に酔いが醒めた。


「げっ!?」


白い物体はキンブリーだった。
あれ、仕事は?
ああ、今日は夜勤の昼上がりだったけ。
それにしても、この辺りに彼の家があるのは分かっていたけど、まさか出会うとは予想外だ。

キンブリーは向きを変え、車道を横断して此方にやって来る。
ああ、罪悪感の元がやって来る…。


「おはようございますっ!!」
「その格好はどうしたんですか?」


紳士が朝の挨拶を流した!?
もう朝ではないけれど。


「いや、これは…。」


キンブリーは、明らかに私の体格に合っていない着衣を指して言った。
何処から見ても借り物と分かるソレ。
上に着たシャツも、下に履いているズボンも、裾を数回折り曲げてサイズを合わせていた。


「こ、これはですね!汚れてしまったので借りた訳でありまして。」
「何故汚れたんですか?」


ああ、マズい。
これは導火線に火が着きかけてる。


「私が酔っ払って、あはは〜っとすっ転んで、頭からワインと料理を被ったからです!」


と挙手をして、素直に真実を告げた。
ちょっとバカっぽくなったけども本当なのだ。
ちなみに、被ったのは赤ワインにチリソース。
手にした鞄にしまわれた、お気に入りの服はもう救いようが無い。


「で、何処で誰と一緒だったんです?」
「友達の家で、その友達と…。」
「その様子から察するに、友人は…」


キンブリーは顎に指をやりながら目を細め、私を眺めた。
悪寒が走る。


「…男ですか。」


私は彼が言い切るより早く動いていた。
どうせ明日会うのにとか、無駄な事とか、考えずに走り出す。
否、走り出したつもりだった。
この踏み出した一歩以上、前に進めない。


「どこに行こうと言うのですか?話は済んでいませんよ。」


素直に言えば許してくれるかな?
なんて考えは甘かった。

私は火の着いた爆弾に捕まってしまったのだ。



 
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