F/Alchemist
□銀の首輪
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私は食堂で昼食を取っていた。
パンをちぎって口に放り込み、スープでそれを喉の奥に押し流す。
その合間、向かいの席で同じく食事中の知人が話しかけてくる。
「もっと良く噛んで食わねぇと消化に悪いぞ。」
「時間ないの。」
私はトレイの上の料理を次々と片付けていく。
この知人との話に花を咲かせていたら、休憩時間がもう殆ど無くなっていたのだ。
午後の始業に遅刻する訳にはいかない。
本日は午後出勤の上官殿は、そういうトコロにとことん煩い方だ。
だから、最低でも五分前には駆け込んでいないとならない。
というかこんな所見られた日にゃ、私は木っ端ミジンコ。
アハハー。
考えただけでも恐ろしい…ッ!
―――カチャン
金属音がした。
誰かが、スチールのトレイをこの長机に置いたのだろう。
「隣、宜しいですか?」
そう丁寧に訊ねられた。
訊ねた声はとても聞き慣れた声で、思わず私はスプーンを落とした。
「ええ、どうぞ。」
知人が答える。
「どうも。」
余所行きの笑顔で私の斜め前に座ったのはキンブリー。
途端に、口の中に残っていた美味くも不味くもない料理の味が分からなくなってしまった。