090817*ひやり

仁王の部屋のエアコンは1週間前から故障している。それを忘れていて、仁王ん家に着いたとき失敗した…と思った。

3日前に仁王ん家に行ったとき、めっちゃ暑くて(黒い家具ばっかりだから)じめじめむしむしして今度2人で遊ぶときは俺ん家にしようってこっそり決めてたのに。

あーぁ、失敗した。しょうがない、心頭を滅却すれば火もまた涼し、だ!

ガチャ、と仁王がドアを開ける音がして、俺を迎えてくれたのはひやりとした涼しい空気だった。


「あれっ?」
「どしたん、ブン太」
「エアコン直ったのか?」
「あぁ、ブン太が来るから急いで昨日直してもらったんよ」
「お、…おまっ…!さすが!イケメン!あいしてる!」

なんだよ、仁王ってば気が利くじゃん。詐欺師とかいってなんだかんだ優しいんだよな、こいつ。
なんとなく、顔がにやにやするのがおさえられない。

…って、えぁ!?


「うん、俺も愛しとお」


……えっ、ちょ…っ、え、えっ、えぇえ!!?
なんで俺仁王に抱き締められてんの?!てか、え、愛し…?

「ブン太…」
「に、にぉ」


「うひゃぁっ…!!!!!」




やられた。

「ぷっ、くくっ…」

仁王は抱き締められて(しかも愛しとおとか言われて)動揺している俺の背中に、あろうことか氷の塊を入れてきたのだ。

思い切り驚いた俺を見た仁王は絶賛大爆笑中。

「ブン太、さすがじゃ…、くくっ、思った以上の反応…ぷっ」
「………」


悔しい。
騙されたことも笑われていることも。
だけど、一番悔しいのは「愛してる」って言われて、動揺してしまったこと。


「なぁ、」
「く…っ、なに?」
「好きだ」
「……え」


「うわっ!!!」

お返しに仁王が用意していただろう氷を仁王の背中に入れてやった。

「ははっ、ざまーみろ!」
「…ったく、おてんばやねぇ」



「好きだ」って言ったことに仁王も動揺したなら、本当におあいこだ。ざまぁみろ。

もしかしたら、俺たちって両思いなのかも、ってそう思ったら、心の奥が少しひやりとした。





〇エアコン購入記念笑。ブン太を騙すのが好きな仁王。まんざらじゃないブン太。

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