090215*愛してる、なんて持たせるな。

ブン太が好きな奴は俺じゃないということは知っていた。つもりだった。どこでどう知ったとか、根拠はとか、そんなものはないけれども、何となく、でも確かにそんな気がしていたんだ。だけどやっぱりどこか心の奥底で1%くらいは俺のことを好きでいる可能性があるんじゃないかって期待していた部分もあったのは確かだ。

「ブン太、」

呼んだ声は小さく消えて、だけど頭の中で何度も反響した。この声は今、自分の腕の中にいる愛しい人に届いているのだろうか。

「……」
「ブン太、」

行動すれば何か変わると思っていた。だけど、状況はただ悪化しただけ。ああ違う。行動の仕方が悪かったんだ。こんな、

「泣かんで、」
「オマエが…っ、言うな…」

無理やり自分のものにしようだなんて考えが、欲求が、嫉妬が。

「でも、」

でもな、俺がこんなふうになってしまったのも、すべて全て、

「ブン太の所為じゃよ」

そう、オマエの所為じゃ。だから、1%の期待も間違った行動も全部全部オマエに持たせて手に入れる。耐えきれなくて落ちてくるまで、いくつもいくつも持たせてあげる。

「オマエが俺を選ばないから」

選択肢がいくつもあるからいけないんだ。だから選ばれないモノができてしまう。俺以外の選択肢をなくしてしまおう。俺しか選べなくしてしまおう。

「なに…」
「愛しとう」
「…っ」
「愛しとうよ、ブン太」

ありったけの俺の愛を持たせれば、すぐに落ちてくるよな。

オマエが欲しくてたまらない。
ブン太、ブン太、愛してる。





〇狂愛な仁王。そんな仁王を受け入れられないブン太。

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