celebration

□目眩急襲
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抱きしめられた温度


しがみついた温度


―――そのどれもにくらくらする。



目眩急襲







「…………茶渡君」

「ム。……なんだ、石田」

「…いや、何だっていうか……放してくれない?」

「…………駄目だ」

「………………」


しっかりがっちり自身を囲う逞しい腕に、雨竜はなんともいたたまれない気持ちになる。
腕だけではない、茶渡は体全体で雨竜を捕まえていた。ちょうど茶渡の胡座の上に雨竜が乗っている状態。まるで小さな檻である。



(…………なんか、懐かしいな)

前にもこうして、茶渡の腕に守られるように包まれたときがあったことを思いだす。今となってはだいぶ昔に感じられた。

誰かの背中に安心感を覚えるなんて初めてで。
低い声で自分を気遣ったときのむずがゆい気持ちも初めてで。
朦朧とする意識のなか、あの広さがただひとつの真実だった。



―――未だに慣れないこの温もり。
けれど馴染んだ安心感。気づけば近くにいる体温。

足並を揃えてくれるのはいつだって茶渡のほうで、実はいつも悔しかったりする。


「………………」


ことん。



「…石田?」

「……………」



体中に込めていた力を抜いて、体全体を茶渡に預けてみる。
茶渡は少し不思議そうに雨竜を眺めたあと、何でもないかのように今までより強く雨竜を抱きしめた。


(…………駄目か…)


…少しくらい、焦ったようなのが見たかったのに。

(結局、僕ばっかり!)


せめて顔が赤いのがばれないように、ぎゅうと茶渡に抱きついた。



(目も眩む程の感情が、)




end.
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