celebration
□目眩急襲
1ページ/2ページ
抱きしめられた温度
しがみついた温度
―――そのどれもにくらくらする。
目眩急襲
「…………茶渡君」
「ム。……なんだ、石田」
「…いや、何だっていうか……放してくれない?」
「…………駄目だ」
「………………」
しっかりがっちり自身を囲う逞しい腕に、雨竜はなんともいたたまれない気持ちになる。
腕だけではない、茶渡は体全体で雨竜を捕まえていた。ちょうど茶渡の胡座の上に雨竜が乗っている状態。まるで小さな檻である。
(…………なんか、懐かしいな)
前にもこうして、茶渡の腕に守られるように包まれたときがあったことを思いだす。今となってはだいぶ昔に感じられた。
誰かの背中に安心感を覚えるなんて初めてで。
低い声で自分を気遣ったときのむずがゆい気持ちも初めてで。
朦朧とする意識のなか、あの広さがただひとつの真実だった。
―――未だに慣れないこの温もり。
けれど馴染んだ安心感。気づけば近くにいる体温。
足並を揃えてくれるのはいつだって茶渡のほうで、実はいつも悔しかったりする。
「………………」
ことん。
「…石田?」
「……………」
体中に込めていた力を抜いて、体全体を茶渡に預けてみる。
茶渡は少し不思議そうに雨竜を眺めたあと、何でもないかのように今までより強く雨竜を抱きしめた。
(…………駄目か…)
…少しくらい、焦ったようなのが見たかったのに。
(結局、僕ばっかり!)
せめて顔が赤いのがばれないように、ぎゅうと茶渡に抱きついた。
(目も眩む程の感情が、)
end.