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□ぷち・わんだーらんど
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春のおやつどきは、なんだか眠くなるもの。






ぷち・わんだーらんど







気がつけば、湯のみと同じ背丈だった。



「………………うぇ?」



テーブルが25mプール並みの広さ。
どうやら小さくなってしまったようだ。


ぽかぽかと柔らかい日の光が差し込んで、部屋はなんだかいつもより柔らかい。
ふむ、と新八はあごにちょんと人差し指を当てた。今までの経験上、ここでじたばたしても仕方ない。多分自分の雇い主がまた何かやらかしたのだろう。

(二週間いちご牛乳なしにしちゃお)

雇い主への罰を決めて、頷いて改めて自分の体を見直す。体だけを見るならば記憶の中の自分と変わりない。ただ湯のみの模様が異常に大きく、ただ天井がまるで空のごとく高くなっていた。
もしかしてこの体なら食べる量も少しで済んで、食費も浮くかもしれない。それは嬉しい。くるくる節約にまわる頭は流石である。


と、唐突に気づいた。
目の前のソファで雇い主…もとい銀時が寝ている。
どうして気づかなかったのだろう?


(…………………)



うず。



新八はちょっとした兼ねてからの願望を叶えてみることにした。





―ロッククライミング、ってこんな感じだろうか。
もそもそ、ぎこちなく手足を動かして新八は思う。いや、もう少し激しい動きをしていた気がする。あれに比べれば自分のしていることは至極簡単なのだろう。なんと言えばいいのか、髪の毛クライミング?

(………なんだそれ)


だが他に形容する言葉が見当たらないのだからしょうがない。新八は今銀時の頭を登っているのだった。


「よいしょ、と。…はぁぁ」


気持ちいいーと銀時の頭のてっぺんに寝転んだ。もこもこふかふかぽかぽか。期待を全く裏切らない。
普段言わないけれど、この髪の毛が新八は好きだ。


「………………………」


息を吐き出して、新八はそのまま目を閉じてしまった。
意識がなくなるまで、一秒とかからなかった。













と、目を開いた。

(……………あれ…夢、?)


畳んである洗濯物と山積みの洗濯物。どうやら途中でうたた寝してしまったようだ。

(…そりゃ夢だよね、湯のみと同じサイズなんて有り得ないもん。…ああでも気持ち良かったなぁ、もこもこで。そうこんな感じで………)

手のひらのふわふわな感触を撫でる。
まさに夢のあの感触。

(……………ん?)

ふわふわの先に、物体がある。まるで頭、…というか


「ぎ………!」(…んさん!?)


ちょうど銀時の頭を胸に抱える格好。
ついでに銀時の腕も、新八の腰に絡みついて身動きが取れない。

洗濯物を畳んでいる時は外出中だったのに、いつ帰ってきたのだろう?それより、なんでこんなこと………


(…もう、顔があつい!)



あんな夢を見たのもこの腕の中にあるもこもこのせいだ。
新八はくるくると銀色を一束指に巻きつけて、それでも起きないあほらしい顔に人差し指をぶにと突き刺した。


(…3時かぁ)



ぽかぽかな太陽に、人肌に、もこもこ。
眠くなる三大要素に再び新八は陥落した。さっきより少しだけ強く、もこもこを抱きしめながら。






end.
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