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□焦がれる情熱に溶けて
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きっと今年はいい夏に。





焦がれる熱に溶けて







じりじりと降り注ぐは太陽の光。
からりと晴れた日は嫌いではないが、こうも暑いと太陽の嫌がらせのような気がしてくる。正直やめてほしい。ドSは打たれ弱いことに定評があったりするのだ。

さらにこの真選組隊服が黒というのもいけない。黒は光を吸収してしまう。 ついでに蜂も寄ってくる。いや別に今蜂は関係ないけど。

(…暑くて思考までぐだぐだしてきやがった)


それでも容赦なく日光は矢のごとく襲いかかってくる。
これが昨日や明日だったら、沖田はさっさと甘味屋にでも行ってアイスでも食べて過ごすか、涼しい木陰でごろごろしてただろう。今こうして陽なたを頑張って歩いているのは、今日は彼に必ず会える日だからだ。この時間帯、この道。彼がセール品目当てに買いものに出掛ける日。
ああ彼に会えれば、少しは涼しい心地になれそうな気がする。優しいブルーとさらさらな黒を思い描いては胸の奥がちくりとした。


(あ、)

駄菓子屋に置いてある小さい冷凍庫につい目が行く。

(うわ、食いてぇ)

あのパキンとふたつに割れる棒アイス。あれを好きな人と分けて食べるのが沖田の密かな夢だったりする。
想像するだけで青臭く恥ずかしい。だが多少のにやつきはしょうがないことであって。


「沖田さん!」

「うおっ、し、新八くんじゃぁないですかィ。偶然ですねィ」

「そうですね。最近よくこの曜日に会いますね」

にっこりと笑む顔が純真すぎて溶けてしまいそうだ。本当は新八が来るのを張っていたのだから偶然でも何でも無いのだが、そこは言えるはずがない。声が裏返ることなく済んで良かったと内心胸をなで下ろして。

「暑いですね」

新八がぱたぱたと両手を扇代わりに扇ぐ。なんて可愛い仕草をナチュラルにするんだろう。直視が出来ない。

「いや全く」

「アイスでも食べたくなりますよねー」

(!)

これは。
これは夢を叶えるチャンスというやつだろうか!
すぐ近くにアイスを買える場所、暑くてたまらないこの日差し、アイスを食べたいと言う新八。
自然に事を運べるチャンス。


「…俺もちょうどそう思ってたとこでさァ。ちょっと待ってな」

たっと小走りで駄菓子屋へ向かおうとすると、「えっ!?」と新八の驚いたような声が聞こえたのでチラと振り返り、

「アイス、奢ってやりまさァ」

そう言って駄菓子屋へ一目散。

(決まった…!)

すでに達成感を感じながらアイスを買うと、駄菓子屋のおばあさんに生暖かい目で見つめられた。「がんばんなよ」という言葉付きで。なんとなくな笑顔を返してみたが、女というのは幾つになっても怖いものなのだろうか。
それとも自分が分かりやすいのか?

(…まさか!)

ババァの気まぐれだ、と決定付けて沖田は急いで新八のもとへ戻った。



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