celebration

□恋人はサンタクロース
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どのテレビも、クリスマス、クリスマス、クリスマス一色。雨竜はリモコンを無造作に放った。

「…はぁ」

毎年毎年、よく飽きずに思い出すものだ。
雨竜は手のひらで目の前を覆う。暗闇の視界にうつるのは過去。

小さい頃は心にきずを作りやすいという。

(しょうもないことなのに、)


人に言えば『なんだそんなことで』と言われるだろう。自分でもそう思うのだから。



―――終業式に一護に言われたことを思い出す。
彼の質問に戸惑いつつも是と答えたら、彼は目に見えて喜んで、

『じゃあ、24日の夜迎えに行くから!』

そう言って去っていった。

(意味不明だ、あいつ)

どこに行くとも、何をするともなかった。




時計を見るともう夜の11時。
随分と遅いな、と思っていると―――――


こんこん。


何故か窓からノック音がした。

「…え?」

まさかと思って窓をあけると、そこには。

「よぅ!いし、」
ぴしゃん。


なんだろう今変なものが見えた気がした。


がらっ。

「ちょ、石田!!なんで閉めるんだよ失礼だな!」

「うわぁ!」
向こうから勝手にあけてきた。

「迎えに行くって言ったろ。何びびってんだよ」

「え、いやちょっと待て黒崎一護!……まずその格好は何だ!」

「フルネ……いや、何かおかしーか?この格好」

雨竜はぶんぶんと首を縦に振る。
だって、サンタ服なのだ。赤と白のよく見るタイプ。恐ろしく似合わない。

「……まぁいーや。ほれ、とりあえずこれ着ろ。すぐ出発すっから」

ぼすんと投げ渡されたのは分厚い生地の白い服。

「出発…?」

「そう。」

広げてみると、それは、


「行くぜ、サンタ代行に」



真っ白なサンタ服だった。






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