celebration
□shining star
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星と星をつなぎ合わせて、
それはほら、あいのかたち。
shining star
まずい。まずった。
何がまずいって今日がもう25日だってことだ。
(カムバック24日!!)
脳内で叫んでみても、状況は依然変わらず。
突如として起きた『デートすっぽかし事件』に解決の糸口は見つからず、かといってお宮入りさせる訳にはいかない。絶対に。
加害者は自分。
被害者は、彼。
沖田はどんよりとため息をついた。
24日に、2人でターミナル前のイルミネーションを見に行こう。
それは大分前から約束していたことだった。
光の飛ぶ様を見たいと、彼は弾けんばかりの笑顔だったと記憶している。
急な仕事が入った。
そう言うなら聞こえはいいが、でも。
この仕事を、隠れ蓑のような扱いにしたくない。何かの言い訳にしたくないのだ。
だから。
「――――新八!!!」
ぜぇぜぇと息がきれた声で愛しい彼の名を呼ぶ。
何十分も走り回り、商店街でやっと見つけた丸い頭。
新八はびっくりしたように振り返った。
「沖田さ――!?」
「新八!」
手を思い切り引っ張り、新八を自分の胸にダイブさせる。人目なんて気にしない。気にしてられない。
冬の寒さに負けないよう、しっかり抱きしめた。背中に、新八の腕が回された気配。
「…新八、新八、ごめん、」
「………わかってますよ。沖田さん」
小さい子にやるそれのように、新八は沖田の背中をぽんぽん叩く。
「……でも、心配しました」
「うん」
「腹も立ちました」
「うん、ごめん、」
「………ターミナル前のイルミネーション、神楽ちゃんにせがまれて、行っちゃいました」
「そか、…………なぁ新八」
沖田はそっと新八を自分から離す。それでも腕は未だお互いの背中に回されたまま。
「昨日は一緒にいられやせんでしたが、……新八の今日を、クリスマスを、俺にくれやせんかィ?」
どうか、埋め合わせをさせて。
かなしい思いをさせたおわびを。
「…もちろん!」
いつか見た笑顔で、新八は笑った。
「じゃ、そうと決まれば善は急げでさぁ」
背中に回していた手を手繋ぎに持ち替えて、走り出す。
寒くなっていく夕方を斬るように。
街を越えて、町を越えて、川を越えて、たどり着いた小さな山の下。
「っはぁ、はぁ、……ここ、は?」
「穴場。」
「穴場?」
「そう。じゃ、登るとしやすか」
「えぇ!?」
この上まだ登るんですか!?と引っ張る手の向こうからきゃんきゃん聞こえるが、気にせず腕時計を見やる。
5時30分。
大丈夫、間に合う。
太陽はもう殆ど地平線の下。
白い息を置き去りにしながら、ただ前へ、前へ。
「――着きましたぜ、新八」
「は、……………わ、ぁ!」
――――いつかの冬の日。この山の上での昼寝が長引いたときがあった。目が覚めたとき、目の前に広がったのは――
「すっごい、綺麗!!!」
そこに広がるのは、満天の星空。
キラキラと存在を主張するように輝く。
「すごいすごい、沖田さん!宇宙にいるみたい!」
「ここは人が滅多に来ない穴場なんでさぁ。
…気に入りましたかィ?」
「はい!」
わぁわぁと新八は飽きることなく感動し続ける。沖田はそんな新八を見て微笑み、そして再び腕時計を見やった。
5時59分。
「新八ー」
「はい?」
3、2、1。
ターミナルを背景に立って、両手を広げて。
「クリスマスプレゼントでさぁ!」
地上が光に溢れた。
「っ!!」
―――2人でターミナル前のイルミネーションを見に行こう。
それは6時から始まる、ターミナル前のイルミネーションの明かりだった。
地上から見るそれとはまた違った美しさで。
上にも下にも、イルミネーション。
「……すごく、綺麗。」
新八は空と地上をゆっくり交互に見ながら、呟いた。
きらきらちかちか。
星空に包まれた錯覚。
「ありがとう、沖田さん」
今までで一番、素敵なクリスマスプレゼントです。
そう言って笑った新八が、とても綺麗で。
澄んだ空気のなか、瞬く星のなかで。
2つのシルエットが、1つに重なり合った。
end.