リリカルFate
□Prologue
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かつて戦争があった。
ーーー聖杯戦争。
それは七人の魔術師(マスター)が七人の英霊(サーヴァント)を駆使して、たった一つの聖杯(万能の器)を手に入れる為に血で血を洗う争い。
数だけを見れば、七人と七騎という世界でも類を見ない程小さな規模の戦い。
しかし
その戦力は正に世界最強を冠してもおかしくはなかった。
‡‡‡‡‡‡
そこで、俺は一つの出逢いを果たした。
その出逢いの場は我が家にある少し古い土蔵の中。
あの時の光景は忘れようとしても忘れられないぐらい衝撃的で、今でもこの脳裏に染み付いている。
間違いなく自信を持って言える。
どれだけ記憶が霞み、風化し、消失しようとも残っているだろう。
そう。
彼女が現れたのは俺が生まれて三度目に味わった《死》と呼ばれる恐怖の瞬間。
相手はアルスター伝説にも記述されている彼のイングランドの大英雄、ケルトの猛犬クーフーリン。
勝てる訳がない。
蟻が象に勝てないように、あの時の俺があの槍の英霊に勝てるはずがない。
必死の抵抗も大した意味を成さず、ただ一方的にやられるだけ。
皮膚に感じる熱さを痛みの内に覚えながら、それでも《生》を諦めなかった。
そして
心臓にあの呪いの赤い槍を突きつけられた時、運命が動き出した。
風に揺れる美しい金砂の髪。
月明かりを纏った幻想的な蒼い服。
そして、どこまでも真っ直ぐで強い意志の篭もった翡翠色の瞳。
彼女のあまりの美しさに、俺は自分でも気付かない内に彼女に見惚れていた。