リリカルFate

□Prologue
1ページ/11ページ

かつて戦争があった。


ーーー聖杯戦争。


それは七人の魔術師(マスター)が七人の英霊(サーヴァント)を駆使して、たった一つの聖杯(万能の器)を手に入れる為に血で血を洗う争い。


数だけを見れば、七人と七騎という世界でも類を見ない程小さな規模の戦い。


しかし


その戦力は正に世界最強を冠してもおかしくはなかった。



‡‡‡‡‡‡



そこで、俺は一つの出逢いを果たした。


その出逢いの場は我が家にある少し古い土蔵の中。


あの時の光景は忘れようとしても忘れられないぐらい衝撃的で、今でもこの脳裏に染み付いている。


間違いなく自信を持って言える。


どれだけ記憶が霞み、風化し、消失しようとも残っているだろう。


そう。


彼女が現れたのは俺が生まれて三度目に味わった《死》と呼ばれる恐怖の瞬間。


相手はアルスター伝説にも記述されている彼のイングランドの大英雄、ケルトの猛犬クーフーリン。


勝てる訳がない。


蟻が象に勝てないように、あの時の俺があの槍の英霊に勝てるはずがない。


必死の抵抗も大した意味を成さず、ただ一方的にやられるだけ。


皮膚に感じる熱さを痛みの内に覚えながら、それでも《生》を諦めなかった。


そして


心臓にあの呪いの赤い槍を突きつけられた時、運命が動き出した。


風に揺れる美しい金砂の髪。


月明かりを纏った幻想的な蒼い服。


そして、どこまでも真っ直ぐで強い意志の篭もった翡翠色の瞳。


彼女のあまりの美しさに、俺は自分でも気付かない内に彼女に見惚れていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ