リリカルFate

□邂逅
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何処までも広がる青い空。


自由気ままの風任せに浮かぶ白い雲。


そして少し潮の香りの混じった新鮮で美味しい空気。


自然に溢れたこの《海鳴町》の上空およそ五十メートル。


現在、衛宮士郎が地面に向けて落ちていた。


「…なんで遠坂の奴はわざわざ空に転移させるかなぁ……」


如何に強化の魔術を使えども、間違いなく無傷ではすまないだろう。


彼女の家系に代々伝わる呪われた特殊スキルをすっかり忘れていた。


その名も《うっかり》


別名《ポカ》とも言うが、ランクで表せば軽くExを越えるかもしれないほどの超スキル。


効果は《大事な場面、ここ一番で単純なミスを犯す》ということ。


「《あの》遠坂が宝石剣まで持ち出したんだ。警戒しとくんだった……」


後悔の念が深まる。


だが、まさかこんな場所に転移させられるなんて誰が予想出来るものか。


何とか木にでも引っかかることを祈りつつ、士郎の落ちるスピードは増していく。





‡‡‡‡‡‡





「今日の鍛錬はこれぐらいにしておこう」

「疲れたぁ〜」


士郎が空から落下しようとしている山の中。


今、そこには高校生ほどの二人の男女が木刀を両手に持ち、和やかに話し合っていた。


「恭ちゃんが先生の時はお父さんの時よりも厳しいよ……」

「師匠としての愛情だからありがたく思い修行をしろ。弟子には早く強くなってもらいたいからな」

「むぅ〜恭ちゃん酷いよ!妹への愛が足りない!!」

「うるさい。早く片付けて帰らないとみんなを待たせることになるぞ?」

「えっ!?もうそんな時間!!?」

「ああ。だからさっ…さ…と……」

「恭ちゃん?」


いきなり黙った恭也の視線を追っていけば、そこには枝に引っ掛かった少年が。


「……ねぇ恭ちゃん、見間違え…とかじゃないよね?」

「ああ。それに放っとく訳にもいかないからな…取り敢えず家に連れて帰るか……」
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