リリカルFate
□剣製 VS 御神
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士郎がこの世界に来て初めて見た山の中。
今、そこでは普段ならしないはずの音が響き合っていた。
ーーーカン!
「くっ…はあぁぁぁ!!」
「ふっ!甘い!!」
ーーーカン!
激しく擦れ合う木の音と共に聞こえるのは二人の男の声。
しかし、片や既に高校生ぐらいであろう青年。
片や小学生、それもまだ高学年ではないだろう少年。
そんな明らかに年齢の離れた二人の拮抗した打ち合いだが、少し離れた場所で見ている女性、高町美由希は息を呑む。
「…強い……」
(シロくん凄い!!あの恭ちゃんが苦戦してるよ!?)
そして、その女性の更に横。
真剣な面持ちで二人の戦いを観察する高町士郎も、美由希ほどではないが士郎の力を見て驚いている。
「…ほぉ……」
(…まさか強いとは思っていたがこれほどまでだとは……)
そんな、言わば観客の心を余所に最も驚いているのはやはり当事者である士郎と恭也の二人。
お互いに過去から現在に至るまでに培ってきた積み重ねがある。
「…くっ……」
(…如何に神速を始めとする御神の業を使ってないからと言っても、これは……)
「っ……!」
(…まさかアイツ以外にもこんな使い手がいるなんて……)
恭也にしろ士郎にしろ、今まで血の滲むような鍛錬、あるいは一瞬でも気を抜けば殺される戦場を乗り越えてきた多少の自負はある。
しかし、それを根底から引っくり返すような相手を目の前にして、その自負が揺らぐ。
たかが十歳の子供。
たかが本当の戦場を知らぬ者。
疑いたくなるような現実が、それぞれの目の前に君臨していた。