リリカルFate

□新たな出会い
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士郎が素振りを再開してから更に三十分の時が流れ、時計の針が時を指す頃、廊下では道場に向かう人影が一つ動いていた。


足音、そして気配すらさせないのは既に武芸を熟練の域にまで極めた血と汗の証。


職業であったSPを引退した今でも、その腕の衰えは全く見えない。


廊下を歩く人間とは、即ちこの家の主である高町士郎。


彼は早朝に士郎が鍛錬を行っている事を知っている唯一の人物。


そして昨日、妻である桃子と共に士郎に関わる《ある事》を決め、それを士郎に伝える為に道場にやってきたのだ。


『ガラガラガラ』


「おっ!シロくん、今日もやってるようだな」

「ッ!?……士郎さん」


士郎(大)が扉を開けた瞬間、急激な空気の流れを感じ、シャドーを一時中断して背後の誰かに急いで構えをとる。


しかし、それも士郎(大)だと知覚すると警戒を解き胸をなで下ろす。


普段から何気なく足音を消して歩く士郎(大)は戦場に慣れてしまった頭や感覚に悪い。


思わず《投影》を使いそうになってしまう。


「すいません。士郎さんは気配がないんでつい警戒してしまって」

(あの気配の消し方は絶妙だ……ひょっとしたら、士郎さんならアイツと戦ってもいい勝負が出来るかもしれない……)


しかし、それはあくまでも《体術》で勝負をした場合に限る。


アイツ、殺人貴には《あの》魔眼がある。


故に如何に体術で互角に戦おうが、士郎(大)が負けるのは必然の明であり、自然の理。


「いや、気にしなくて構わない。いきなり扉を開けて声を掛けた俺が悪かったんだ」

「…はぁ、えっと……それで、俺に何か用事でもありましたか?俺に出来ることなら何でも言って下さい良くしてもらってるのに、このままじゃあ心苦しくて」

「ははは、そう言ってくれると助かるよ」


コホン、と一度間を空けると、士郎(大)はやや真剣味を帯びた表情へと変わる。


「実はね、シロくん。昨日、桃子とも話し合って決めたんだが……シロくん、なのはと一緒に学校へ通ってみないか?」
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