リリカルFate
□もう一人の魔法少女
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「士郎くんもこれればよかったのに……」
家の近くにあるバス停から乗ったバスの中、なのはは隣に座っている恭也に話し掛ける。
「士郎は義理堅い奴だからな。先に交わした美由希との約束が優先なんだ、仕方ない」
「そうなんだけど……」
やっぱり、士郎くんとも一緒にお出掛けしたかった。
士郎くんはいつも家族でお出掛けする時には一人で家に残っちゃうから。
お兄ちゃんと二人の今日はひょっとしたらって思ってたけど。
「お姉ちゃんもまた今度でいいって言ってたのに……」
「そんなに言ってやるな。今度また誘えばいい」
「…うん、そうだよね」
「………」
僅かに沈んだ表情を見せるなのは。
その顔を横から窺う恭也は、既にかなり後ろへと離れた家にいる士郎のことを考える。
「………」
士郎を拾ってから今まで、それなりに親しくなったつもりだった。
だが、やはり士郎には一線置かれている。
居候とはいえ、士郎はもう高町という家の家族の一人だ。
遠慮なんていらない。
父さんや母さん、それに美由希やなのはもそう考えている。
それでも、士郎は自分のことを“居候”だと認識している。
“家族”ではなく“居候”
その間にある分厚い壁がなかなか壊れない。
まだまだ士郎とは“家族”になれていない。
最近は特にそう実感することが多くなった。
次々と移りゆく景色を窓から眺めつつ、二人を乗せたバスは目的地へと進む。