Web拍手小説

□安息の特効薬
1ページ/1ページ






安息の特効薬
(秋山 澪夢)








「うぁ〜ダ〜メ〜だ〜」

「……はぁ」


桜高学園祭当日。

ボーカルを務める澪は、中庭のベンチで隣に座る幼なじみを相手に本日何度目かのため息を吐く。


「あぁ〜うぅ〜」

「いい加減腹括らないと本気で危ういぞ?」

「…それは分かってるんだけど……」

「ったく、ホント律とは正反対だよなぁ」

「うぅ…こういう時“だけは”律の性格が羨ましい……」


頭を抑えながら何度も唸る。

・・・仕方ないんだ。

だって、あんな服を着て大勢の前に出るなんて・・・やっぱり無理だぁ〜


「まぁ、アレは結構さわちゃんの趣味が入ってるからな」

「だよな!」

「俺は見てみたいけどな、澪のゴスロリ」

「怒るぞ!?」

「いやいや、澪なら実際似合うと思うぜ?」

「うっ・・・き、着ない!絶対に着ないからな!」


・・・確かに可愛いとは思うけど、大勢の前に出て着るのは別だ!


「はいはい。最初っから、照れ屋な照れ屋な澪ちゃんが着れるとは思っちゃいませんよ」

「なんかバカにされてるのか!?わたしは!?」

「違う違う、からかっただけだって」

「・・・・・」

「OKOK、俺が悪かったから、まずは握り締めた拳を降ろそうか」

「・・まったく、律といいお前といい!」

「ハハハ。でも、実際問題服は別にしてもちゃんと歌えるのか?恥ずかしがり屋のボーカルさん?」

「・・・ぅあ〜」


やっぱり無理だ!

あんな大勢の前で歌うなんて・・・は、恥ずかしすぎる!

負のスパイラルに陥っていると、不意に視界が何かに遮られる。



「澪」

「ぇ?」

「ゆっくりと深呼吸」

「・・・すぅ〜はぁ〜」

「もう一回」

「すぅ〜はぁ〜」

「いいか?今から俺の言う言葉を頭に植え付けろ」

「わ、分かった」


そして告げられるのは魔法の言葉。


瞳をギュッと閉じて、神経を集中させた耳から頭に、ゆっくりと浸透する。


「澪なら大丈夫、絶対に成功する。演奏が終わった時、律も唯も麦もみんな一番の笑顔を浮かべてる」


・・大丈夫・・・

私も、律も、みんな・・・

みんな・・笑顔・・・


「・・・・・」

「OK?」

「う、うん」

「よし!いい子だ澪!」

「うわ!?や、止めろ!私はもう子供じゃないんだ!」

「ハッハッハ、俺に出来るのはここまでだ。後は仲間に何とかしてもらえよ?」

「わ、分かってるよ!」

「じゃあ行ってこい!俺も客席から澪たちの応援してるからな!」

「・・・うん!」


そう言ってわたしは仲間たちの元へと走る。

まだ緊張はしてるけど、だいぶんとマシになった。

相変わらず、お前はわたしの緊張を上手い具合にほぐしてくれる。

うん、少しぐらいならあの服を着ても・・・





「澪ー!愛してるぜー!!」

「そんな恥ずかしいこと叫ぶな!!」


























安息の特効薬
(サービスいいな、澪)(・・・もう・・お嫁に行けない・・・)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ