エール小部屋
□愛の証拠
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恋人同士になって初めてのクリスマス前日。イベント事にうといルフィとは違い、エースはウキウキしていた。
「ルフィ、どっか行きたいとこねェか?」
「んー。ねェ」
「夜景でも見に行くか」
「それよりうまいモン食いてぇ」
「ああ、もちろん」
――なんて、言っていたのに。クリスマス当日、学校から戻るとルフィはエースの部屋にいた。しかも、1人でだ。
皇室のクリスマスパーティーに、エースは出席していた。
テーブルには一枚の白い紙。『ごめん、ルフィ。なるべく早く帰る』と書いてあった。
「肉ーーー!!」
当然、おとなしく待っていられなかったルフィはパーティー会場へ走った。
それは、青山のあるレストランを貸し切って行われていた。出席者は全員正装の為、制服姿のルフィは周囲の注目を浴びた。
肝心のエースはというと。白いYシャツに細めの黒いネクタイ、黒いスーツを着ていた。
「また格好つけてんなぁ」
自分との身分の違いを見せつける服装に、うんざりしながらルフィは人波をかき分けていった。
「エース」
「ルフィ、来たのか」
「待ってらんねぇよ」
頬を膨らませると頭を撫でられた。
「ごめんな。行こう」
持っていたグラスをテーブルに置くと、エースはルフィの肩を抱いた。
「お前らもう帰るのか?」
こちらに気づいたサッチが近寄ってきた。
「あ! 変な髪のヤツ」
そうルフィに言われてげんなりする。
「いい加減名前覚えろよ……まぁいい。そんなに焦って帰る事ねぇだろ?夜はなげぇんだ」
「お前には関係ない」
いい放つとエースは踵を返した。
「まだ思い出すんだよなぁ、あのときのお前の声」
「は?」
「後でおれの部屋来いよ、エース。気絶するくらい気持ちよくしてやる」
サッチが笑っていて、エースは鳥肌が立った。
「行く訳ねぇだろ、バーカ」
2人のやり取りを聞いて、ルフィはまた頬を膨らませた。サッチがまだエースに好意を抱いているのは明らかで。以前つけられたキスマークを思い出し腹が立った。
会場を出た途端、ルフィはエースに抱きついた。
「ルフィ?」
「今もあいつと何かあるのか? エース」
「え? ある訳ねぇだろ。おれが愛してるのはお前だけだ」
すぐに欲しかった言葉が返ってきて、ルフィはにこっと笑顔になる。
「そうだよな。よかった! 早く行こうぜ」
ぐい、とエースの手を引いた。
「その前に」
急にエースが立ち止まる。
「ん?」
スーツのポケットから何やら取り出して、ルフィの手のひらに押し付けた。
「何だ?」
突然手渡された小さな箱にルフィは首を傾げる。
「おれがお前を愛してる証拠だ」
箱を開くと、中には薬指にぴったり合うシルバーリングが入っていた。
「どうすんだ? コレ」
真剣に訊ねられ、エースは笑った。
「ハハハッ。お前の好きにしろ」
「ふぅん」
指輪の意味がわからないルフィには、必要なかったらしい。
「いらねぇか?」
「いや、いる」
「そうか」
あまりの薄い反応に、少しがっかりしたエースだったけれど。
夜寝る頃には、ルフィの指にリングがしっかりとはめられていた。
「気に入ったか?」
「うん」
嬉しそうに笑うルフィを見て、ベッドに押し倒す。
「愛してる、ルフィ」
「ん……あ、あっ。エース……」
自分が買ったリングをはめたルフィに興奮して、いつも以上に濃い夜を過ごした。