視線

□金狐の悲しみ 完
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『化け物』
『どうしておまえなんかが』
『死ね』

いや……
どうして
どうしてみんな私を嫌うの
どうして私をそんな目で見るの
どうして…どうして……



「我が弟の仇!死ね!!」
それは突然のことだった。誰もが私に憎悪の言葉と暴力しかふるわない。ただ一人いつも食事をもってきてくれるやさしい笑みを浮かべる女性。
その人が変貌した。
くないを振り上げ襲い掛かってきた。

ザシュ


『初めて』の人殺しの記憶はここまでしかない。
あと、覚えているのは真っ赤な紅だけ。



異変を感じた三代目火影は里の犠牲となった少女の下へと急いだ。
そう彼女は犠牲となったのだ。里のために。

「ナルッ」
部屋へと飛び込んだ三代目が見たのは、息切れ倒れている女性と血を浴び茫然と座り込んでいる少女の姿。
急いで駆け寄り少女を抱きしめた。
「ナル、よかった。無事じゃったんじゃな…ナル?」しかし、呼ばれても少女は虚ろな目で動かない女性を見続けている。
「動かない。ナルのせい?ナルが…ナルがいたから?ナルが…ナルは生まれてきてはいけなかったの」
光をなくした瞳から涙を流しなが少女がつぶやく。

そして、少女は気を失った。
火影は少女を抱き締めながら、涙を流しながら
「すまぬ。腑甲斐ない爺を許しておくれ」
謝った。


この時少女はわずか二歳だった…


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