視線

□最凶との出会い 完
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三代目火影が書類を整理していると、窓からいきなり声がした。
「じい様、呼んだ?」

火影が窓に目を向けると、そこには腰まである光輝く銀色の髪をひとつに結び、紫水晶のような瞳を輝かせ笑みを浮かべている17.8歳ぐらいの少女が立っていた。

火影はその姿を見ると大きくため息をついた。
「蒼炎や、窓から入ってくるなと何度言ったらわかるのじゃ」
「やだな、じいさま。細かいこと気にするとストレスたまって禿げるよ」
「そのストレスを与えているのは、どこの誰だと思っとるんじゃ」
毎夜交わされるおなじみの会話に諦めがついたのか、火影はどこか寂びそうにつぶやいた。

「蒼炎、お前にひとつ頼みたいことがあるのじゃが、聞いてくれるかの」
いつになく真剣な顔をしている火影に蒼炎も笑みを消した。
「一人暗部に入りたいといっている奴がいるんじゃ」
蒼炎は眉をひそめた
「なにそれ。改まって言うようなことじゃないよな。それとも何?私にその新人の育成でもやれとでも。暗部総隊長のこの私に」
はき捨てられたセリフと共に殺気を放たれ、火影は背筋に汗がつたうのがわかった

「詳しいことを説明するからその殺気をしまっておくれ。この老いぼれの心臓を止めるきかいのぅ」
ここはさすが火影ともいうのだろうか。少し本気交じりの冗談で返した。
「はあ……それで、その新人暗部が何だっていうんだ」
蒼炎は小さなため息といっしょに殺気を吐き出し時間の無駄だといわんばかりに話の続きを促した。
「実は正体不明なのじゃ」
「ふーん、正体不明ね……って、はあ?」
蒼炎は思わず普通に返事を返したが、その言葉を反芻すると声を上げた。
「じいさま、正体不明って何なの。何でそんな怪しいのを暗部に入れようとしてんだ」
「怪しいのは十分承知じゃ。じゃが、これが凄腕での。話しかけられるまでその気配に気づかなかったぐらいだからのう」
「じい様が気づかなかった…」
「それでじゃ、ためしに今日お主に頼むはずだったSの任務を渡したら、いとも簡単に片付けてきよったわい。もちろん単独でじゃ」
初めは驚きで目を見開いていた蒼炎は次第に面白い玩具を見つけた子供のように笑みを浮かべた。
(いや、実際子供なんだけど)

「そいつの正体を探ればいいんだな」
もはや、るんるん気分の蒼炎だ。


「この里にそんなすごい奴がいたんだ。会うの楽しみだな〜どれぐらい強いんだろ」

「蒼炎や。浮かれるのはいいが、気をつけるのじゃよ。何の目的があるのかわかったものではないからのぅ」
「大丈夫。私がやられると思う、じい様」
蒼炎は笑みを浮かべて返した。


それは、王者の笑み。
自分に過信ではない絶対の自信がある者が浮かべる……


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