視線

□金狐の悲しみ 完
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「じぃさま、おねがいっ!私知りたいの」

事件のあと、ナルは二日の間目を覚まさなかった。
そして、目を覚ましたときには変わってしまっていた。
口調もその愛らしい笑顔もそのままなのが、瞳に宿る意志がその光が変わっていた。

いままでは、訳もわからず冷たい憎悪の視線にさらされてどこか不安げな瞳をしていた。そして、愛に飢え求めていた。

なのに今は、どこかさとったような諦めたような、それでいて強い意志を感じさせる瞳をしている。


(悲しいことじゃ ナルや諦めてしまってはならぬ 誰か…誰かナルを救っておくれ)

「…わかった」


事が起きたのは2年前…
木の葉の里は九尾の襲撃をうけた。

本来、九尾は禁忌の森を中心としたここら一帯の土地の守り主。
彼方は土地の植物や動物すべての生命を守護した。
この守護に感謝し、その尊き存在をすべての生命があやめ奉った

その守護に感謝しないのは人間だけ
その守護に気付かないのは人間だけ                    そして、人間は禁忌を侵した……

木の葉の里のある一族が九尾の子を殺したのだ

そして、あの事件
九尾の襲撃がおこった

「里の多くの者がなくなった。そして、4代目火影も…」
「4代目火影様?」

4代目が居たことを知らないナルは首を傾げた。

「あぁ、そうじゃ。そやつは九尾から里を守るために戦った。戦うといっても相手は九尾じゃ。かなう相手ではないからのう。それで奴は自分の命と引き替えに九尾を封印することにしたのじゃ」


生まれたての赤子に


長い沈黙が流れた。
火影はつらそうな顔をしながらナルを見つめた。

「それが私?」
「そうじゃ」

ナルは無表情のまま聞いていた。
そして、火影がうなずくのをみてから目を閉じた。

(この子は今なにを思っているのじゃろう。)

火影はナルを見ながらあの男を思い出していた。

(すまぬ。この子につらい目に遭わせてしまっとる。おぬしの大切な娘を。
…ナルに伝えるべきじゃろうか。おぬしの娘であることを)


「わかったわ。じぃさま、ありがとう」
「まっ待つのじゃ、ナル!」
出ていこうとするナルトをあわてて止めた

「これだけはわかっておくれ」
火影は必死になって続ける
「あやつは…4代目はナルが里を救った英雄として扱われると信じて死んでいったのじゃ。これだけはわかっておくれ」

ナルは火影の顔をみつめる
「そう…」
小さくつぶやいて部屋を出ていった

その顔はどこか寂しげだった


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