FAIRYTAIL
□闇姫、S級冒険(クエスト)編
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大きな翼を広げて空に飛び上がったライヴとクロウ。
上空は冷たい風が吹いている。
「やる気がおきないな、ライヴ」
「ガゥゥ…」
ライヴにクロウが気だるそうに話し掛けるとライヴもそれには同意だったようだ。
「ガゥっ…ガゥゥ」
ライヴは愛する主の為に主には一晩中飛ぶことになるだろうから眠っておいて欲しかった。
ここのところのクロウの顔色の悪さを心配しており、倒れないかと疑っていた。
「お前が頑張っているのに私だけ寝るなど、無理だよ」
どうやらライヴはクロウに寝ろと言ったらしい。
そんなことを受け入れる筈もなくクロウは風避けのためのゴーグルを被る。
「ガゥン…」
ライヴは感動した様に鳴くがそこには納得の色はなかった。
ゴーグルをしてはいるもののその目の下には大きな隈ができている上に夢見が悪いことを暮らしているライヴにはすぐ分かるものだ。
「大丈夫だ、私のことは。慣れている」
「ガゥガ」
ライヴは渋々納得してスピードを加速させる体勢をとった。
それに気づいたクロウは慌ててライヴを止めた。
「ライヴ、少し待ってくれ。ご飯を食べたい」
クロウは大きなフランスパンを取り出す。
そして一口だけパンをかじると甘いミルク味が広がったがそれが不快だった様だ。
顔をしかめて再び荷物の中へとパンを戻した。
その行動に驚いたのはライヴだった。
ライヴ自身はクッキー一枚で過ごせるという何とも燃費のいいからだではあるが、人間は違うのだ。
幾ら体調が優れなくともあんな一口でクロウの激しい動きはとてもじゃないが体には毒でしかない。
「ガゥ?」
「あんまり腹が減らないんだよ、ライヴ」
ライヴは少な過ぎるんじゃ?と問うとクロウはごまかした。
ライヴは先程のことから自分が何を言おうと聞かないと分かっているので黙っておくことにした。
「スピードを上げてくれ」
身を屈め、空気抵抗が少ないようにしたクロウにライヴはいきなりスピードを加速させた。
夜風が彼らの体を打ち付けるがそれが心地良かった。
半刻ほどたった頃、島が見え始めたライヴはスピードを緩める。
クロウはゴーグルを外してライヴの柔らかな毛を撫でていた。
その優しい手つきにライヴは嬉しそうに喉を鳴らす。
「ライヴのスピードは助かるな。こんなに早く着くとは思っていなかった」
「ガォオオオ」
そうクロウが言えば誇らしげにライヴは吠えた。
そしてクロウはマントを羽織る。
それはミストガンから譲り受けた物ではない。
上質な生地の黒いマントには妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマークが入っている。
それが意味することはギルドの掟を破った者の制裁を加えること。
マカロフが与えたクロウだけのギルドでの立ち位置である。
彼女自身の能力の高さと公平さに一目を置き、それにかけているのだ。
島の上空から見ると戦闘が丸見えで油断だらけだと心のなかで思うクロウ。
「アクエリアス!!!!」
浜辺ではルーシィが戦闘中であり苦戦しているものの何とかなると判断した。
クロウは酷く冷たい殺気を出し、降りて行く。
「アクエリアス!!?そんなに強力な星霊まで持っていらしたの!!?」
新人ルーシィが普通では持っていない星霊を繰り出すものだから敵のアンジェリカは驚いていた。
無理もないクロウでさえ驚いたのだから。
そしてその中にフワリと舞い降りたクロウは重々しいオーラを放っていた。