Dance with me

□第3話
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真壁さんが義兄さんの
急な出張に同行した
ということは、
樫原さんから聞いていた。


しばらくの間。


パーティまでの間は
樫原さんがあたし専属の執事になる。


真壁さんは樫原さんの
代わりに義兄さんに同行する。


それは義兄さんとの
お茶会の時に決まったことなのに、
実際そうなってみると
あたしは・・・・とても寂しかった。



いつも一緒に
居てくれた執事が
いなくなったからじゃない。


毎日一緒に居て
気がつかなかった。


大好きな人と
いろんな瞬間を共有すること。
一緒に景色を見ていた贅沢さを。


(真壁さん、いつ帰ってくるかな。)


逢って話がしたいよ。


逢えなくなって初めて
こんなに逢えないことが
たまらなく切なくて
心細くなることを知った。


鳴らない携帯を
何度も見る。

気がつくと
真壁さんのことを考えている。
何でもない1つ1つが
全て真壁さんに繋がっていた。


気がつくと
落ち込んでいるのがわかる。
溜息をついてしまう。



・・・樫原さんが悪いんじゃない。


・・・・むしろ
樫原さんと一緒に居て
何でもしてくれるのに
それでもなにか
足りないような気がするのは、
きっと・・・あたしのせいだと思う。


戸惑っていた。



一番傍にいる人が
変わったから。



樫原さんは真壁さんと全然違う。


いつもあたしを
見ている点は一緒だけど
なんていうのかな。


いつも先回りして
あたしの言いたいことを
汲んでくれる。
いつも褒めてくれる。
あたしのことを
可愛がってくれてるんだって
樫原さんの言葉の端々から
感じられる。


お兄さんみたいだ
と思ったのは
すごく当たっていた。

優しい言葉で
1つ1つ丁寧に
教えてくれる。

ダンスの時だって
手取り足取り。


(・・・・・)

不満がある、わけじゃない。

なのに。

どうしようもない
違和感で慣れないままだった。

でもそうやって
慣れないのを
見せれるわけもなく。


あたしはずっと
真壁さんのことばかり
気を取られながらも
出来るだけ笑おうと
努力していた。




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