プリキュア創作2

□まどかの炎
1ページ/2ページ

「まどかー、そろそろ出発するルンよー」
「はいー、でもちょっとだけ待っててもらえますかー?」

プルルン星でロケットの修理も終わって出発直前になり、わたくしはどうしても最後に挨拶しておきたいあの人の元へと向かった。

「フレアさん!今回はどうもありがとうございました!」
「…お前さんは…たしかワシに風を送ってくれた紫の方の…」
ロケットを修理している時とは違って、穏やかな炎を揺らしてフレアさんは私の方を見てくれた。
「名を、確かまどか、って言ったか」
「あ!はい!覚えてくれたんですね。嬉しいです」
「…まあ、あんだけ熱い魂を見せてくれたんだからな。えれなって嬢ちゃんにもよろしく言っておいてくれよな」
「はい…あと、最後にフレアさんにお聞きしたいことがあるんですけど…」
「…ワシに?嬢ちゃんから?えっと、今更なんじゃけえ」
わたくしから単独で質問されるのが意外だったらしく、フレアさんは風も吹いてないのにメラメラとお顔の炎を揺らした。
「…わたくしも将来は一人で違う文化の環境に旅立つつもりでいます。それにあたって留学の先輩でもあるフレアさんから何かアドバイスをご教授頂きたく参りました」
「…アドベース…ったって、ワシの場合はかなり特殊な方だと思うがな…留学っつーより移住に近いかの」
…状況は全く違うとは思うけど、どちらにせよ住む星を変えてまで自分のやりたいことのために冒険したこの人を、私は人生の恩師として尊敬したいと思えた。
「…その、故郷の人と会えなくて寂しくないですか?」
「…そりゃな。けどみんな最初は反対はしてたけど、こっちの星でちゃんと結果を出したら認めてくれたさ。嬢ちゃんがどんなところに旅立つかは分からないが、とにかくどこへ行っても文句を言う前に誰かを納得させるだけの『成し遂げたこと』を身につけなくてはいけねえ。ワシも若いころは色々とヤンチャはしたが何も実績も持たないで口だけ達者な奴にはならねえよ心掛けていたじゃけ」
「…なるほど…」
…お父様から禁止はされてるけど、昨今はSNSなどで個人の意見を世論として発信しやすい世の中になったとは言えるけど、ただ自分の意見を言える場があるからとはいえ自分が凄い人間になったと勘違いしやすくなるからそれは気を付けた方が良いとも言われていた。
フレアさんとお父様…立場も生まれた星も全然違うけど、どこか一貫して繋がっているところはあるんでしょうか。
イカタコ運動をしている時に強い言葉は投げかけられたけど、不思議とただの罵倒とは思えないで、お父様のアドバイスの感覚を思い出しましたものね。
「ま、手に職がつけたらつけたで忙しくなって、今度は文句を言う暇がなくなっちまうがな。けどワシはそれくれえが健全な状態だとも思うじゃけ」
「…ええ、わたくしもそう思います。忙しい方って、その立ち振る舞いが既に何かのメッセージを発信しているものですから」
「…嬢ちゃん、その年の割に色んな経験してんだな」
「あ、生意気だったでしょうか…」
「いんや」
フレアさんは大きな顔を崩して、独特の笑顔を見せてくれた。
…この人も、仕事の外だと普通に笑いかけてくれる人何ですね。ますますお父様と似ていますね。
「…嬢ちゃんはワシにちゃんと『実績』を見せてくれたじゃねえか。そこいらの若い者とはちげえって、ワシには分かってるよ」
「…恐縮です」
「だからワシから嬢ちゃんにアドベースしてやれることはほとんどないよ。あんたはどこの世界に行っても、今日みたいに自分で決めた限界を自分で超えれるような生き方が出来るはずでい。遠い星の彼方から応援させてもらうぜ」
…って、案外ロマンチックな言い回しをするんですね、フレアさん。
…そこはお父様とは違うところでしょうか。
「あー、でも一つだけ口を挟ませてもらうと…」
「…はい」
「…お盆とか正月とか、ちゃんと決めた時期には親御さんのとことに帰ってやんなよ。ワシはこんな星に移住しちまった以上、それが中々出来なくて苦労してるんでい」
「…フレアさん、別に故郷が嫌いって訳ではないんですね」
「…まあな、嬢ちゃんだって、別に今の家族や仲間は大切なんだろ」
「…はい」
「…だから夢を追うのも勿論大切じゃが、今いてくれる仲間と家族との繋がりを、しっかり大切にしちょれよ。会える時はちゃんと会って、感謝の気持ちを言葉にするんじゃき。ワシみたいになるんじゃなかよ」
…どことなく、フレアさんの炎は蜃気楼みたいな揺れ方をしていた。
「…って、職人気質のワシが『気持ちを言葉にする』何て言っても説得力ないかの…嬢ちゃんも、さっきは強い口調で命令するようなこと言って悪かったな。仕事を貰ってる立場はこっちだってのに」
「あーいえ、こちらこそロケットを直してもらったんですもの…それに…」
「…それに…」
「厳しい綱渡りは慣れっこですから!」
ゆらゆらと迷うように揺れていたフレアさんの炎は、元気に燃え始めた。
「くくく…嬢ちゃんなら本当に、ワシ以上の大物になると思うよ」
「…はい、落ち着いてまたみんなで宇宙旅行が出来るようになったら、またこの星にみんなで立ち寄らせて下さい!」
「…おお、その日を楽しみにしちょるよ」

ララ達が呼んでいるので私もロケットに戻って行く。
プルルン星だけじゃない。これまで色んなところを旅した星の人達に胸を張れるような自分でいれるようにこれからも綱渡りを頑張らないとですね。
さあ、次はどんな星へといくのでしょうか。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ